スマホを開けば、1分間で完成する見栄えの良いレシピ動画が無限に流れてくる。料理の手順はこれ以上ないほど可視化され、便利になったはずなのに、なぜ現代人はかつてないほど「毎日の献立」に苦しんでいるのか。実は、真面目なビジネスパーソンほど、良かれと思って自ら料理のハードルを激増させる最悪の行動をとってしまっているのだ。佐々木俊尚氏の新刊『人生を救う 名もなき料理』から一部を抜粋し、私たちが真っ先に捨てるべき「料理を複雑化する罠」について解き明かす。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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「複雑さ」は料理の敵である
本書でこれから説明する料理方法は、とてもシンプルである。シンプルすぎて、「そんな単純素朴な料理じゃ、料理と呼んでもらえないかも」とあなたは不安になるかもしれない。
「手が込んでいる料理のほうが良い」と思い込んでいる人も多そうだ。
しかしそれは完全な間違いである。
余計な作業をたくさん重ねれば美味しくなることもあるのは事実だが、家庭料理だったらそこまでこだわる必要はないとわたしは考えている。
高級レストランのプロの技を真似しない
高級レストランのシェフには、さまざまな技がある。
しかしわたしたちが作りたいのは素朴な家庭料理なのであって、素晴らしい美食ではない。真似する必要はない。
たとえばパスタをゆでるのに、塩分濃度を精密に計算し、鍋に投入する塩の量をきっちり決めるというプロのテクニック。
そんなことをいちいちやっていたら、パスタを作るのが嫌いになるだけだ。
家庭料理ならテキトーでいい
イタリア料理では、油にニンニクの香りをつけるということをする。
たっぷりのオリーブ油をフライパンに流し込み、弱火でじわじわとニンニクのスライスに火を入れていくと、たしかに良い香りがする。
それはそうなのだが、こういうのもいちいち面倒なプロの技である。
複雑さは料理の敵である。家庭料理はもっとシンプルでいい。
要領の悪い人は、本質的でない細部にこだわり自滅していく。「食材に火を通し、味をつける」という原点に立ち返るだけで、手間は劇的に削減できるのだ。
(本記事は、書籍『人生を救う 名もなき料理』を抜粋・再編集したものです)
1961年生まれ、文筆家。テクノロジーから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで縦横無尽に発信している。現在は東京・長野・福井の三拠点生活を送り、コロナ以後に注目されてきている移動生活の先駆者でもある。妻は、イラストレーターの松尾たいこさん。一緒に暮らし始めたときから、料理は全面的に担当。その毎日の食卓を織り交ぜつつ、手際のよい調理の仕方、献立の立て方などを紹介した著書『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)は、大きな話題を呼んだ。『人生を救う 名もなき料理』は、12年ぶりの料理関連の書き下ろしとなる。







