◆慕われる上司はウルトラマン!? 部下の話を「時間で区切る」ルール
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンク「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵 著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は、生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。同書をベースに、表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウを紹介しよう。

「そりゃ上司も潰れるわ…」絶対にやってはいけない“制限時間なし”の悲劇Photo: Adobe Stock

信頼関係が一瞬で壊れるリスク

部下からの相談や1on1ミーティングにおいて、マネジャーとして真摯に耳を傾けることは非常に重要です。しかし、「相手のペースに合わせて延々と続く悩みに付き合い、自分自身がすっかり疲弊してしまった」という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?

相手を理解しようと寄り添う「共感」は、実は多くのエネルギーを消費します。自分の心のキャパシティ(許容量)を超えて無理に話を聞き続けると、集中力が途切れ、無意識のうちに相手を拒絶するような態度をとってしまい、せっかく築いた信頼関係を一瞬で崩してしまうリスクすらあります。

“共感疲れ”を防ぐ方法

そうならないために活用したいのが、「カラータイマー方式」です。これは、特撮ヒーロー・ウルトラマンのエピソードにヒントを得た時間管理術です。

ウルトラマンは地球上で活動できる時間が限られており、胸の「カラータイマー」が青から赤に変わって点滅するとタイムリミットが迫っていることを知らせます。同じように、面談などで誰かの相談に乗る際には、あらかじめ「制限時間」を設けるのです。

話を聞く前に、自分の中で「今日はどこまでなら余裕を持って寄り添えるか」を見極め、明確な枠を設けることが、このアプローチの最大のポイントです。

自分のキャパシティに合わせて柔軟に調整する

その時間設定は、自分のキャパシティに応じて決めましょう。1時間話を聞く余裕がある人もいれば、30分で限界という人もいます。

限界が3分のウルトラマンほど短くしないにしても、仕事の状況や心身の状態によって、その都度調整すればいいのです。日によっては「今日は後の会議が迫っているから15分だけなら」というケースがあっても全く問題ありません。

大切なのは、面談の冒頭で「今日は〇〇分までならしっかり時間が取れるよ」と、相手にその枠をあらかじめ共有しておくことです。

「時間枠」がもたらす上司と部下へのメリット

この事前の枠組みは、マネジメントにおいて大きなメリットをもたらします。

一つ目は、上司自身の心身を守れることです。終わりが見えていることで「いつまで続くのだろう」というストレスから解放され、限られた時間の中で高い集中力を保って相手の話に耳を傾けることができます。

二つ目は、部下自身の思考が整理されることです。制限時間があることで、部下も「この時間内に一番伝えたいことは何か」を自然と意識するようになり、ダラダラとした感情の吐露で終わらず、課題解決に向けた建設的な対話になりやすくなります。

時間の線引きは「冷たさ」ではなく「誠実さ」

時間を区切ることを「冷たい上司だと思われるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、疲労困憊して上の空で長時間話を聞くよりも、100%のエネルギーで向き合うほうが、はるかに誠実な対応です。

無理をして共感の限界を超えてしまう前に、ぜひこの「カラータイマー方式」を取り入れてみてください。上司自身の心の余裕が、結果的にチーム全体の心理的安全性と持続可能なパフォーマンスを引き出す鍵となるはずです。

※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)をもとに作成しました。