◆なぜ「普通はわかるだろ」は響かない? 優秀なマネジャーが実践する「モノサシの脇置き」
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンクで「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵 著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は、生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。同書をベースに、表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウを紹介しよう。
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普通に考えればわかるはずなのに……
部下への指導やフィードバックの場面で、「なぜこんな当たり前のことができないのだろう」「普通に考えればわかるはずなのに」と歯がゆい思いをしたことはありませんか?
経験豊富な管理職やマネジャーの皆様であれば、ビジネスにおける「正解」や「常識」を熟知しているからこそ、こうした感情を抱くのは自然なことです。しかし、多様な価値観が交差するチームビルディングにおいて、その「当たり前」がコミュニケーションの大きな壁になってしまうことがあります。
「常識」の罠:無意識に押しつけている自分の常識
私たちは日頃、無意識のうちに自分自身の価値観やこれまでの経験を基準にして物事を判断しています。部下と接する際、「普通は~」「常識的に考えて~」「そんなはずはない」といった言葉を使ってしまいがちな人ほど、知らず知らずのうちに自分の「常識」に他者を当てはめている可能性があります。
上司としての経験に基づく「普通」や「常識」は、過去の成功体験に裏打ちされたものかもしれません。しかし、それをそのまま部下に当てはめて対話を進めてしまうと、相手は「頭ごなしに否定された」「自分のことを理解してもらえない」と感じ、心を閉ざしてしまいます。
真の信頼関係を築くためには、この無意識の押しつけに気づくことが第一歩となります。
見ている景色が違う:相手の「前提」に立つ
そこで日々のマネジメントにおいて意識したいのは、相手の「前提」に立つことです。ここでいう「前提」とは、その人が置かれている立場・役割・価値観・背景などを指します。
たとえば、長年の経験と広い視野を持つ管理職と、目の前の業務を覚えることに必死な新入社員とでは、見ている景色も背負っている責任もまったく違います。育ってきた環境や、ライフステージの変化によっても仕事の優先順位は異なります。
「なぜあのような行動をとったのか」と疑問に思うような部下の言動も、決して悪気や怠慢からではなく、彼らなりの背景や理由が存在します。相手がその「前提」に基づいて言動を選んでいることに気づけば、あなたの共感は一段と深まります。
自分の「モノサシ」を脇に置き、対話の質を変える
マネジャーに求められるのは、部下を自分の枠にはめ込んで評価することではありません。対話の場においては、判断基準である自分の「モノサシ」をいったん脇に置いて、相手の世界観を踏まえて話を聞いてみましょう。
「この部下は、どのような立場や価値観からこの発言をしているのだろうか?」と想像力を働かせるだけで、聞く姿勢は劇的に変わります。相手の前提に立とうとする態度は、「あなたを尊重し、理解しようとしている」という強力なメッセージとなり、部下の心理的安全性を高めます。
自分のモノサシを脇に置くことは、決して上司としての軸を捨てることや、部下の言いなりになることではありません。相手を深く理解した上で、最も効果的な指導を行うための戦略的でしなやかなアプローチです。
ぜひ次回の面談から、相手の「前提」に立つことを意識してみてください。チームの風通しが良くなり、メンバーの主体性が引き出されるのを感じられるはずです。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)をもとに作成しました。








