手書きの10分には、確かに先生の想いがこもります。そのこと自体を否定するつもりは全くありません。ただ、現場では「本来なら1分で済む内容のために、10倍の時間をかけている」というのが事実です。そしてもう1つ見逃せないのは、その10分間はほぼ全て、子どもから目を離している時間になるという点です。
口頭であれば、子どもたちの様子を見守りながら話すこともできます。ICTでも、音声入力など工夫すれば、画面に向き合う時間を短くする余地があります。
しかし手書きの文字は、手元を見ずには書けません。私が知る限り、黒板に後ろ手で板書をしながら生徒を見続けた高校時代の世界史の先生くらいしか、そうした“離れ業”はできませんでした。もちろん、保育園の先生に同じことを求めるわけにはいきません。
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「子どもの記録」というより
「大人同士の交換日記」に近い
保護者によっては、「もっと詳しく書いてほしい」という声をいただくこともあります。ただ、ここで少しだけ計算してみてください。
4歳児以上の国の配置基準では、子ども30人に対して保育士1人です。連絡帳を書くのに1人当たり10分かかるとすると、10分×30人で300分、つまり計5時間にもなります。その時間は本来なら子どもと過ごせたはずの時間です。そう考えると、手書きの連絡帳は「子どもの記録」というより、「大人同士の交換日記」に近いものではないかと思います。
もちろん、保護者が悪いわけではありません。保育士も「できるだけていねいに伝えたい」と思うからこそ、時間をかけて書いてきました。
ただ、「子どもと向き合う時間」を削ってまで、「大人同士の交換日記」に近いものを続ける意義があるのか。見直す余地はあるということだけは、知っておいていただきたいのです。
別記事『「本当に子どものためになる保育園」の決定的な特徴』では、保護者向けのサービスが増えるほど、その裏で子どもの時間が削られていく事例を他にも紹介。なぜ「子どもの保育」と「大人のための手間」のバランスが崩れつつあるのか、解説します。保育園の運営費の多くは税金が支えているので、子育て世帯以外の人も興味を持って読んでもらえるでしょう。








