個人投資家の間で大きな支持を集めるのが『株トレ』シリーズです。シリーズ第2弾の『株トレ ファンダメンタルズ編』では、60題のクイズを通じて「業績や財務の読み方」を学べます。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書のポイントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
在庫の変化に着目する
本書では、企業の財務を読み解くためのポイントをいくつか紹介していますが、そのうちの1つが、「棚卸資産の変化」です。
棚卸資産とは、「在庫」のこと。窪田さんは、この数字の動きから、企業の異変が見えてくることがあると指摘しています。
たとえば、売上や売上債権が増えていないのに棚卸資産が増えている場合、企業が思ったように商品を売れず、在庫が積み上がっている可能性があります。これは経営悪化のシグナルになります。
在庫比率を確認する
次のバランスシートを見てみましょう。
製造業G社の過去2年のバランスシートと業績です。ここから読み取れるのは、棚卸資産が大きく増加しているという点です。
※G社は、解説のために設定した架空の会社です
さらに「短期借入金の5億円増加」、「現預金の5億円減少」という変化も起きています。
売上も売上債権も増えていないのに棚卸資産だけが増えていることから、「意図しない在庫」が積み上がっている可能性があると考えられます。
さらに、この状況をはっきりさせるために「在庫比率」を計算してみましょう。
在庫比率(%) = 期末在庫 ÷ 売上高 × 100
[第56期の在庫比率]
= 20億円 ÷ 120億円 × 100
= 16.7%
[第57期の在庫比率]
= 30億円 ÷ 110億円 × 100
= 27.3%
在庫比率が10%以上も上昇しています。
もし今後、売上が大きく増える見込みがあり、それに備えて意図的に在庫を積み増しているのであれば問題はありません。
しかし、本当に急成長が見込まれるのであれば、通常は売掛債権や買掛債務といった項目も同時に増えてくるはずです。
それにもかかわらず、在庫だけが増えている場合は、売れ残りによる在庫増加と考えるのが自然でしょう。
在庫が適正水準に戻るまで、減産を迫られる可能性があります。工場停止などに至れば、業績はさらに悪化します。
また、不良在庫の処分による損失が出る可能性もありますし、在庫の保管コストや借入金の金利負担も業績を圧迫します。
在庫調整が終わるまでは、業績の回復は期待しにくいと言えるでしょう。
株価だけでは見えてこない企業の内部の変化も、財務の数字を丁寧に追うことで浮かび上がってきます。「在庫の変化」は、その重要なヒントを教えてくれるサインなのです。


