吉沢亮と共演「すごく新鮮で楽しかった」、弟役・杉田雷麟が感じた“不思議な空気”が流れた瞬間〈ばけばけ第121回〉

遺言には妻に全財産を譲ると書く

 そこへ、丈(杉田雷麟)がやって来た。

 彼は、『KWAIDAN』を日本語に訳してきたのだ。トキや子どもが読める本を、と言いながらできた本は英語の本で、トキは読めない。本ができあがってきたときに、トキはそれに気づいていたのだろうか。

 もしかして英語を勉強している勘太たち子どもは、少しは読めるかもしれないが。

 とにかく、丈、お手柄である。

 夜になって、トキは丈の翻訳版を読んで興奮を抑えることができない。

 読みふけるトキを寝室に残し、ヘブンはとぼとぼ書斎へ。

 机の上の『KWAIDAN』と、その海外の批評(子どもだましの民話にすぎない)を見つめていると、胸が苦しくなったらしく、手で抑える。ヘブン、体調が思わしくないと以前手紙に書いていたが、今度は錦織のようにヘブンがなる番なのだろうか。

 何も知らないトキは、数日経っても、興奮が冷めず、子どもたちに『KWAIDAN』を読み聞かせている。今日は「雪女」だ。

 そこへヘブンが帰ってきて、トキを呼び出しふたりきりになると、「ワタシ、ヤマイ、エマシタ」と告白する。心臓の病らしい。展開、早い。最終週がはじまって、数分ののちに、胸が苦しくなって、「ヤマイエマシタ」である。そして、手回し良く、書き上げたばかりらしき遺言書を渡す。そこには

「ザイサン、スベテママサンニ、カイテアリマス」

 なんだか生々しいなあ。

 でも、そのあとがいい遺言(いや、お金の問題が悪い遺言というわけではないが)。

「シニマストモ、ナク、ケッシテイケマセン」から、あれしてこれしてと続く。小さい瓶を買ってヘブンの骨を入れてほしいとか。小さな瓶を手回しよく用意していてトキに手渡す。

 そして「カナシム、ワタシ、ヨロコブナイ……。ママサン、コドモとカルタシテアソブ。イカニワタシ、ソレヨロコブ」。

 これは、トキのモデルの小泉セツが実際に『思い出の記』に書いていたことだ。

 大ヒット曲『千の風になって』の歌詞みたいである(ヘブンのほうが先)。

 再び居間に戻ったヘブンは、明るく振る舞い、トキは「次妙なこと言ったら、小さい瓶に入れますけんね」と冗談を言う。

「小さい瓶」の意味は、トキとヘブンしか知らない。

 ラストカットが小さい瓶で、Xデーの予感を感じさせながら、つづく。