若いうちは体力もあり、仮に本業で思うような成果が出なくても「転職して取り返す」ことができます。したがって、副業の機会費用は比較的低いといえます。
ただし、ここで覚えておくといいのは、キャリアの「ピボット」という考え方です。ピボットとはバスケットボールなどのスポーツで使われる用語で、「軸足は固定したまま、方向転換する」という意味合いです。
私自身、30代半ばの頃、新しい事業部に異動希望を出すか迷っていた時期に、偶然飛行機で同席した、当時勤務していたグローバル企業の海外人事責任者からこう助言されました。
「自分の軸が十分に定まっているなら、チャレンジしなさい。まだ定まっていないのなら、まずは軸をつくることです」
旅行先でじっくり考えた結果、当時の私はまだ軸が固まっていないと感じ、異動希望を出すのを見送りました。今振り返っても、あれは正しい判断でした。
副業も同じです。若いうちは、「まず本業で軸をつくる」か、「副業をするにしても軸足づくりに寄与するものを選ぶ」ほうが賢明です。
軸ができていないうちにあれもこれも手を出すと、結果的にすべて中途半端になる――これが最大の機会費用になります。
中堅~ベテラン層は本業に
差し支えない程度に副業を
中盤以降のキャリアでは、むしろ副業の機会費用が高くなる傾向にあります。
「このプロジェクトで成果を出さないと昇進の線が消える」「副業を始めたと知られたら“本業への忠誠心が低い”と思われるのでは」といった見えないプレッシャーが働くからです。
さらに、家庭とのトレードオフも無視できません。
「この週末に子どもと出かけなければ、もう一緒に出かけてくれないかもしれない」
そうした時間的・感情的コストも、立派な機会費用です。
そんな中堅~ベテラン層の方は、逆に「副業をしない機会費用」を考えてみるのもいいかもしれません。
「今いる会社のやり方でしか通用しない人材になってしまう」
「社外でのネットワークや新しい刺激が得られない」
「定年後に選べるセカンドキャリアの幅が狭まる」
つまり、「今の会社だけで通用する自分」にとどまることも、見えない損失なのです。
『世の中のことも自分のこともみるみるわかる お金の「選択」人生の節目に役立つファイナンス超入門』(森 暁郎、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
自分の軸ができあがっている人ほど、その軸足を持ちながら積極的にピボットして、ビジネスで価値発揮できる場を少しずつ複線化していくことのリターンは大きいでしょう。
週末限定のプロボノ(社会貢献活動)、スタートアップの顧問、地域ビジネスの支援――そうした副業的活動が、本業で培った経験を社会に還元しながら、新たな出会いや気づきを生むこともあります。
副業に正解・不正解はありません。
違いを生むのは、機会費用をきちんと見ているかどうかです。
・本業の軸足を弱めていないか
・将来のキャリアの伸びしろを削っていないか
・家族や健康と引き換えにしていないか
・逆に、副業をしないことで会社依存が強まりすぎていないか
このように機会費用の考え方も活用して、ご自身の価値を着実に高めつつ、「1分1秒の時間の使い方」について納得感を増やしていきましょう。







