経営者が本気で取り組めば
社風は変わる

 もう一つは、上司自身が規律を守ることです。当たり前のことのように聞こえますが、実はとても重要です。

 上の立場の人が平気でハラスメントをしていれば、現場の社員は変わりません。被害を受けるのは立場の弱い社員です。社風を変えるためには、経営者や役員が率先して姿勢を示す必要があります。

 これはハラスメントとは別の話ですが、以前、ある企業で「社内では全員を“さん”付けで呼ぶ」というルールを導入した例があります。導入当初、ある役員が社長を役職名で呼んだところ、社長が「私のこともさん付けで呼びなさい」と厳しく指摘したそうです。その結果、社内にさん付けの文化が定着したといいます。

 逆に社内でのさん付けを決めたのに、役員だけは従前どおり肩書で呼ぶことにした会社もありました。それでは何の意味もありません。

 経営者が本気で取り組めば、社内の文化は変わります。逆に、経営者が例外をつくれば、どんなルールもすぐ形骸化します。

 社風と規律の整備があってこそ、研修も生きてきます。どこからどこまでがハラスメントになるのかという境界線を正しく理解するために、研修は必要です。昔は問題にならなかった言動でも、現在ではハラスメントと受け取られるケースがあります。しかし、研修を行うだけでは十分ではありません。

一流選手とコーチの間で
パワハラ問題が起こらないワケ

 もう一つ大切なのが、日常のコミュニケーションです。

 私はコミュニケーションには「意味」と「意識」の両方があると考えています。意味とは言葉そのものの内容ですが、意識とは相手との関係性、つまり信頼関係のことです。信頼関係ができていないと、同じ言葉でも強い攻撃として受け取られてしまいます。

 嫌いな人に何か言われると、それだけでパワハラに感じてしまうことがあります。言った本人には悪気がなくても、普段から関係が悪ければ、受け手は強く反発します。