「あなたのスキルは奪われることはないが、お金は…」

 彼は、2022年のバークシャー・ハサウェイ年次株主総会で次のように語っている。

《インフレに関して、問題はそれがどの程度になるかだ。(中略)次にどれだけのインフレが起こるか、誰にもわからない。10年後、20年後、50年後、あるいは来月、どれだけのインフレになるかは誰にもわからないのだ》

《しかし、インフレに対する最良の防御策は、依然としてあなた自身の個人の稼ぐ力(パーソナル・アーニング・パワー)である。もしあなたがバイオリンをとても上手に弾けるなら、インフレ下でもかなりうまくやっていけるだろう。他の人より上手に弾けば、人々は喜んでお金を払う。あらゆることに言えることだ。つまり、あなたのスキルは奪われることはないが、お金は奪われるかもしれないということだ》
(出典:CNBC ウォーレン・バフェット・アーカイブ「バークシャー・ハサウェイ年次株主総会 午後の部」、2022年5月2日)

 この言葉の意味はとてもシンプルだ。物価が2倍になれば、財布の中にある1万円の価値は半分になってしまう。しかし、あなたに「他の人から必要とされる優れたスキル」があれば、物価が2倍になった世界では、あなたのスキルに対する報酬(給料)も同じように上がっていく。

 お金そのものの価値はインフレで奪われてしまうが、自分自身の頭脳や体に身につけたスキルや経験は、どんなに物価が上がっても決して奪われることはない。それが最強の防御になるのだ。

それぞれの「稼ぐ力」が対インフレの最強の盾になる

 バフェット氏の言葉は、単なる精神論や根性論ではない。世界最大の資産運用会社であるブラックロックの長年にわたる研究でも、この「個人の稼ぐ力」がインフレに対する最強の盾になることがデータで明確に証明されている。

 経済の専門用語では、この稼ぐ力のことを「人的資本(≒将来稼ぐ予定の給料の合計額)」と呼ぶ。ブラックロックは、ミシガン大学が調査したアメリカ国民の所得データを使い、過去40年間にわたる各年代の給料の伸び率と、世の中のインフレ率を比較した。