そう。完璧な人より、ちょっと抜けてるけど愛嬌のある人が出世していく。そういう場面を何度も見てきました。つまり「馬鹿を演じられる人」が最強なんです。本当は賢いんだけど、それを見せない。これが、僕がたどり着いた一つの結論でした。
ところで佐藤くん、「馬鹿」という言葉の語源、知ってる?
「正論」を言った人間は、なぜ排除されたのか
――漢字で「馬」と「鹿」、ということくらいしか知りません……。
中国の歴史書『史記』に登場する「指鹿為馬(しかをさしてうまとなす)」という故事から来ている、という説があるんです。これがね、非常に示唆に富んでいる。
昔、中国の秦の時代に、趙高(ちょうこう)という権力者がいました。彼がある日、当時は珍しかった鹿を皇帝に献上して、こう言った。「これは馬でございます」と。
皇帝は「いやいや、これは鹿だろう」と笑った。そこで、周りにいた家臣たちはどうしたか。権力者・趙高の顔色をうかがって、あるいは空気を読んで、皇帝の前で「いいえ陛下、これは馬でございます」と、趙高に同調したんです。
一方で、正直に「いいえ、あれは鹿です」と事実を言った家臣たちもいた。彼らはどうなったと思う?
――まさか……。
そう。後で趙高に排除されてしまったんです。この故事は「正しいことを言って、大勢の前で権力者や上司のメンツを潰すことのリスク」を教えていると、僕は思うんです。
二人きりの空間で、こっそり「あれは鹿ですよ」と耳打ちしてあげるならいい。でも、状況を見ずに正論を振りかざすのは、人間社会において非常に危険なんですよ。
もりた・まさみつ/1950年名古屋市生まれ。財団法人日本気象協会を経て、1992年初のフリーお天気キャスターとなる。同年、民間の気象会社 株式会社ウェザーマップを設立。親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオ出演のほか全国で講演活動も行っている。2005年より公益財団法人 日本生態系協会理事に就任し、10年からは環境省が結成した生物多様性に関する広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーとして活動。環境問題や異常気象についての分析にも定評がある。学校法人桑沢学園 東京造形大学 客員教授、一般社団法人島バナナ協会 代表、将棋ペンクラブ審査員。好きな天気は「竜巻」。







