年間100世帯以上の相談にのる発達障害専門のFPで、ADHD当事者でもある岩切健一郎氏が書いた『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』が発売中だ。本書には「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」など、発達障害の有無にかかわらず、多くの口コミが寄せられている。
4月2日~8日は発達障害啓発週間。それに伴い、著述家で、ADHD当事者でもある小鳥遊(たかなし)さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

【発達障害のリアル】ADHD当事者が、親を失望させたある行為Photo: Adobe Stock

物欲がない自分は、大丈夫だと思っていた

 服やブランド品に強い関心があるわけでもないし、ショッピングそのものにあまり興味がない。だから、自分はお金で大きく失敗しないはず。そう思っていました。

 しかし、物欲がなくてもお金は減るんです。

 友人との食事サブスク疲れたときのマッサージ
 どれももっともらしい出費だからこそ、かえって自分に甘くなっていました。

 大学を出てから就職するまで、資格試験の受験生をしていた時期のことです。

 ある日、親が管理してくれていた自分名義の口座のキャッシュカードを見つけました。親戚からもらったお年玉やアルバイト代などが入っていた口座です。

 あるとき飲み代のために、この口座から軽い気持ちで引き出してしまい、そこから歯止めが利かなくなりました

 残高が大きく減ったことは、通帳記入をしていた親にすぐ見つかってしまいました。

 親は強く責めることはしませんでした。でも落胆した気配ははっきり伝わってきました

 何も言わず、取り出しにくいよう通帳とカードを束ねて引き出しの奥にしまう姿が、かえって胸に刺さりました。

 当時の私は、自分がなぜそんなことをしてしまうのか、うまく説明する言葉を持っていませんでした。

 後年、自分が発達障害であることが分かり、使いたいという衝動が抑えられなかった理由が、少し分かったような気がしました。

説教ではなく、仕組みが救う

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』には、「『貯められない』をラクにする仕組みの作り方」という項目があります。

 お金の苦手さんは、貯金のために口座を分けたり、財形などの仕組みを作ったりしても、口座に手を付けてしまうことがあります。

 自分で引き出せてしまう環境だと「引き出さないように我慢するぞ」といった具合に意思が生じることになります。

 だから、引き出したいと思ってもすぐに引き出せない環境を作るのです。

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』(P.56)

 貯金に手を付けた経験のある自分にとって、これは「救い」でした。

 ここにあるのは、「引き出してしまった自分が悪い」という説教ではなく、「引き出してしまうなら、そうならない仕組みを作ろう」という発想です。

 使わないためには、使えなくすればいい。
 シンプルですが、それだけになかなか正面切って伝えてくれる機会も少ないものです。

 本書は、そんな「実は、こうですよね?」という現実を見つめながら、責めるのではなく、仕組みで助けようとしてくれる本でした。具体的な仕組み作りについても紹介されていて、できない自分に劣等感を覚えることなく、気楽にお金のことを解決できるきっかけになるはずです。