「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。
発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。
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ケアレスミスが多いのはなぜ?
うっかりミスやケアレスミスが多い発達障害の人は多くいます。
何度も注意しているのに、なぜなおらないの? と疑問に思う人も多いでしょう。なまけてるのでは? なんて感じている人もいると思います。
発達障害とは生まれつきの脳の特性で、脳神経の仕組みや遺伝、環境など様々な要因が影響した結果、生活で困難を抱えている状態です。
これは本人の努力でコントロールできるものではありません。「気をつけよう」と思っても、それがうまくいかないのは脳の働きによるものなのです。
「うっかりミス」も立派なADHD TAX
この連載で何度かお伝えしているADHD TAX。
特性が原因によるうっかりミスで生じる、出費、時間のロスも、立派なADHD TAXです。
様々なADHD TAXを経験してきた当事者として、そしてお金の相談を受けてきたFPとして、私はADHD TAXを「7つの税金」に分類しています。
今回はうっかりミスによって生じる「不注意税」についてご紹介しましょう。
不注意税 「うっかりの連鎖、連鎖、連鎖」
不注意による出費はADHD TAXの中でも、特に「やっちまった感」が強いです。
私はこの出費が多い傾向にあります。最も多いのは字を書く時の失敗。
例えば年賀状(今は出さなくなりましたが)やレターパックの書き損じです。1回あたり数十~数百円の損失ですが、何回も間違えて時間と細かいお金を浪費するので、精神的なダメージが積み重なります。
ただ、投函する前に見つけられれば、まだいいほう。
一番まずいのは、送り先の人から書き損じを指摘される場合です。特に名前の間違いは最も失礼にあたります。仕事にも影響が出るので、不注意によるADHD TAXは本当にやっかいです。
その他にも不注意系のADHD TAXはいろいろとあります。
不注意税~忘れ物や落とし物
財布やスマホを忘れて不必要な出費が発生したことのある人も、少なくないでしょう。財布の紛失は届け出、買い替え、カード類の再発行など、経済的にも精神的にもダメージは結構大きくなります。
私も財布は割とよくなくすほうで、昔、高速道路の真ん中で財布を落としたことがあります。なぜ? っていう感じですよね。高速道路に乗る前のガソリンスタンドで給油する際、車の屋根に一旦財布を置き、そのまま走行していたのです。警察に見つけてもらったので、まだ良かったですが、時間は大幅にロスしました。
不注意税~仕事のミス
仕事のシーンでも不注意が経済的な損失を引き起こすことがあります。
メールや書類の誤字脱字、必要なデータの削除、打ち合わせ時間の間違いなど、思い当たる人も多いでしょう。私の場合は書類の不備が最も多かったです。
「あのミスがなければ、この仕事があったのに」という話を聞いたことも1度や2度ではありません。
不注意税~事故、破損
不注意による事故や損傷、破損も出費を増加させます。
例えば、電化製品を正しく操作せずに壊したり、運転中に注意力が散漫になり事故を起こしたりすることがあります。
特に交通事故は、経済的にも肉体的にも精神的にも(トリプルパンチ!)負担が大きくなりがちです。
私は20代のころ、毎年何かしらの事故を起こしていました。15年以上車を運転していますが、未だに10等級です。
隣に塀があったことを忘れてバックして車体を削る、助手席側にポールがあることを忘れて発進、ミラーを折る……、かなりの数の事故を起こしてきました。そのたびにお金が出ていきますし、時間とメンタルの消耗も半端ないです。
こんなふうに考えてもらえたら
このように特性が原因で起こるミス、そして出費、時間のロスはとても大きいのです。
もちろん、「発達障害だから、ミスするのは仕方ないんです」と開き直るつもりはありません。毎回「やっちまった……」「申し訳ない……」という気持ちになり、相当メンタルを消耗しています。
ですから、当事者はミスをしたくてしているわけではないこと。
そしてミスによって生じる出費や時間のロスはもちろん、場合によっては体力も消耗していることを、頭の片隅に置いてもらえたらうれしいです。
もしあなたの周りに、何度も同じミスを繰り返す人がいたら、「繰り返さないようにどうしたらいいのかを一緒に考えよう」と声をかけてもらえたら、当事者としてこれ以上嬉しいことはありません。
(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』から一部抜粋・編集したものです。)






