「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。読者からは、
「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」
「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」
「簡単だけど役立ちます」

といった喜びの声が届いています。発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

発達障害の子を育てる母親が、「そんなの知らなかった!」と泣いて後悔した制度とは?~場合によっては1000万円の差~Photo: Adobe Stock

悲しい現実

 以前DMで、発達障害の子を持つ親御さんからこんなメッセージをもらいました。

「特別児童扶養手当を子どもが19歳になって初めて知りました。
本当は3歳からもらえたみたいです。
どうにか3歳からの16年分もらえませんか?」

 残念ながら答えは「できません」です

 後ほど詳しく説明しますが、特別児童扶養手当は申請して通れば毎月3万7830円(2025年度2級)を受け取れます。しかしさかのぼることはできず、受給決定からの受け取りになります。

 この方は制度を知らなかったために約700万円のお金を受け取れなかったのです。もし発達障害の子どもが2人いたら1000万円以上です。

 知っているか知らないかだけで、受け取れるお金が大きく変わるのが制度の怖いところ。そして残念ながら救済措置はありません。調べなかった人の責任になってしまうのが国の制度なのです。

 就労移行支援で働くスタッフさんや、放課後等デイサービスのスタッフさん、担当医など(ここでは総じて支援者と呼びます)は、詳しいことを知っているはずだと思いますよね。

 しかし決してお金の専門家ではないですし行政に詳しいわけでもないので、間違って覚えていたり、情報がアップデートされていなかったりするケースがあります。

 もちろん、正確な情報を適切なタイミングで案内してくれる支援者もいますが、そんな方は少ないのが現状です。

 これは支援者の方々が悪いのではなく、それぞれの専門分野と社会保障が別の領域だから仕方のないことなのです。ですから、意地悪されているなどとは思わないでくださいね。

障害のある子どものいる家庭がもらえるお金

「特別児童扶養手当」は、発達障害など、障害のある子どもやその親などの経済的な負担を軽減できるようにする国の制度です。

 この手当は、知っているか知らないかで収入が大きく左右される制度のひとつです。

「岩切さんの投稿で制度を知ったのがきっかけで行政に問い合わせてみたら、
特別児童扶養手当を取得できました!

 と感謝されたのも1度や2度ではありません。

 以前、この制度を知らずに苦労していたあるお母さんと面談したことがあります。その方はシングルマザーで、発達障害の診断を受けたお子さんの支援に全力を注いでいたものの、経済的にはギリギリ。支援サービスの情報を調べる余裕もない日々でした。

 面談の中で制度のことを伝えたところ、「それ、もっと早くに知りたかった……」と、泣きながら感謝されました。実際に申請が通り、数か月後に「月3万円以上って、本当に大きいですね。生活が全然違います」と報告をもらった時、制度の存在を伝えることの意味を強く感じました。

 意外とこの制度は周知されていません。自分で情報を取りに行くか、親切な支援者がいる、といったことがなかった場合、知らないままの人も多い制度です。ぜひ覚えておきましょう。

概要をつかんだら、すぐに申請しましょう!

 特別児童扶養手当はさかのぼって受け取ることはできません。該当する可能性がある人は、概要をつかんだらすぐに申請しましょう。

 これだけ申請をおすすめする理由は、先ほどのシングルマザーの方もそうでしたが、発達障害のお子さんのいるご家庭は経済的な負担が大きくなることが多いからです。

 例えば、配偶者のどちらかが子どもの面倒を見るために働けなかったり、放課後デイに通うための料金が発生したり、その他にもカウンセリング代や医療費がかかったりする場合があります。正直、お金はかかります。ですから、お子さんとその親御さんが安心して暮らせる環境を整える助けにしていただきたいです。