第3の悪事:東大寺大仏殿を焼いた?

 3つ目は、奈良の東大寺大仏殿を焼いたという罪です。永禄10年(1567)、久秀と三好三人衆が奈良で戦った際、大仏殿が焼失しました。

 しかし『多聞院日記』では、この火災は三好側の陣営から出た火が燃え移ったものと記されています。宣教師ルイス・フロイスの著作『日本史』でも、戦闘中の火災として描かれており、久秀が放火したとは書かれていません。

 久秀は法華宗に帰依していたとされますが、興福寺に対して否定的だったわけではなく、常に一定の優遇・保護政策をとっていました。そもそも茶人としても名高く、高い美意識を持つ文化人でもあった久秀が、貴重な文化財を意図的に破壊するとは考えにくいのです。

再評価されるべき戦国官僚・松永久秀

 史実の松永久秀は、軍記物に描かれた「三大悪人」というより、むしろ三好政権を実務面で支えた有能な政治家であり、主家への忠誠を示す家臣であり、茶の湯や築城に通じた文化人でもあったというべきなのです。

 もちろん、江戸期の軍記物が描いた「悪のカリスマ」としての松永弾正も、物語としては魅力的です。しかし史料に基づく実像は、はるかに複雑で興味深い人物像を示しており、そろそろ正しく再評価してよい時期に来ているといえるでしょう。

『豊臣兄弟!』第11回より。木下小一郎長秀/豊臣秀長(右、演:仲野太賀)と竹中半兵衛(左、演:菅田将暉) (C)NHK『豊臣兄弟!』第11回より。木下小一郎長秀/豊臣秀長(右、演:仲野太賀)と竹中半兵衛(左、演:菅田将暉) (C)NHK
『豊臣兄弟!』第11回より。信長の妹、市(左、演:宮崎あおい)と浅井長政(右、演:中島歩) (C)NHK『豊臣兄弟!』第11回より。信長の妹、市(左、演:宮崎あおい)と浅井長政(右、演:中島歩) (C)NHK

 松永久秀といえば、最期に「平蜘蛛の茶釜を抱えて爆死した」という逸話が広く知られています。

 次ページの動画では、このエピソードについて一次史料の記録との比較をしています。気になった方は、動画をご覧ください。