スタートアップが成功できるか、失敗して消えてしまうか? それを決めるのは、Product Market Fit(PMF:プロダクト・マーケット・フィット/市場で顧客に愛される製品・サービスを作ること)を達成できるかどうかにかかっている。『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』(田所雅之著、ダイヤモンド社)は、起業家の8割が読み、5割が実践する起業本のベストセラー『起業の科学』を9年ぶりに大改訂した最新版。本連載では同書から抜粋して、スタートアップの成長を加速するポイントについて、わかりやすくお伝えしていきます。
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ユニコーン企業(時価総額10億ドル以上のスタートアップ)が
続々と生まれる
これまで見てきたようなクレイジーなアイデアが求められている背景には、ITの進歩で、マーケットのパラダイムシフトが高速化していることがある。
ここ最近、まるで雨後のたけのこのようにユニコーン企業(時価総額10億ドル以上のスタートアップ)が続々と生まれるようになった。
そして、評価額の上昇カーブがすさまじい。
さらに生成AIが民主化されたことにより、10人でもユニコーンが作れる可能性も出てきた。
生成AI時代の新イノベーションカーブ:
瞬間蒸発する競争優位性
マーケティングの権威ジェフリー・ムーア氏が提唱した古典的なイノベーションカーブであるイノベーター、アーリーアダプター、そして悪名高い「キャズム」を越えた先にあるアーリーマジョリティー。この段階的な普及モデルは、もはや現実と乖離している。
従来型のイノベーションカーブは企業に猶予を与えていた。プロダクトを検証し、改良を重ね、段階的に市場へと浸透させるとき、時間的余裕があったのだ。
しかし、スマートフォンによる情報伝達の加速に加え、2022年以降の生成AIの登場とあらゆる業界の席巻は、この普及曲線をさらに大きく変えた。
生成AI × ビッグテックが生み出した
「瞬間蒸発」現象
現在のイノベーションカーブは、トライアルカスタマー(新しもの好きの初期ユーザー)から一気にバーストマジョリティ(爆発的に広がる一般層)へと飛躍する2段階モデルに変貌している(図表1-1-8)。
そして生成AI領域では、さらに従来理論を覆す「ビッグテック(巨大IT企業)逆転劇」という新たなパターンが支配的となった。
先駆者が市場を開拓し、後発組が追随する――この常識は完全に過去のものとなった。
ChatGPT、Google Gemini(ジェミニ)、Microsoft Copilot(コパイロット)といった巨大テック企業のAI参入により、既存の成功企業が一夜にして「瞬間蒸発」する現象が頻発しているのだ。
(本稿は『増補改訂版 起業の科学 スタートアップサイエンスVer.2』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社ユニコーンファーム 代表取締役CEO
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップの3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動した。
日本に帰国後、米国シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップ約1500社の評価を行ってきた。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。
2017年、新たにスタートアップの支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役社長に就任。その経験を生かして作成したスライド集『スタートアップサイエンス2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』『「起業参謀」の戦略書』(ダイヤモンド社)など。





