「なぜ知らせてくれなかった」
母の親戚や近所の人から非難の嵐
邦子さんの実家の親族から一馬さんの携帯に着信があったのです。開口一番、「なぜ知らせてくれなかったのか」という言葉が飛び出しました。
「身内の死に目に会えなかった。都会に行った者は常識がない。せめてお別れくらいさせてほしかった」
「直葬なんて聞いたことがない。あなたたちは一体何を考えているの」
あまり面識がない母の実家からの非難は1時間以上続きました。翌日には父方の叔父からも連絡があり、「先祖代々のやり方を無視するとはどういうことか」と強い口調で責められたのです。
さらに深刻だったのは近所からの反応でした。邦子さんは地元の婦人会に長年所属しており、地域のコミュニティーと深くつながっていました。訃報を知った近隣住民が次々と自宅を訪ね、「お線香も上げられなかった」「なぜ教えてくれなかったのか」との言葉をぶつけてきたのです。
2週間の休暇を取って
説明して回るも「葬儀のやり直し」
やむを得ず、一馬さんは慶弔休暇を超える2週間の休暇を取得。親族やご近所の方に事情を伝え歩きましたが、葬儀をやり直すべきだと言われ続けました。
特に母方の親族から強く葬儀のやり直しを求められたため、兄弟は「弔い直し(葬儀のやり直し)」を決断しました。
「母の意志を守ろうとした結果、2度葬儀をすることになってしまいました。母の言葉を尊重したと伝えても、親族が怒ってしまったのでやむを得ません。こんなことなら最初から普通の葬儀にすればよかったです」
家族葬や直葬など
簡素な葬儀が増えた背景
家族葬・直葬は今や日本の葬儀の主流となりつつあります。株式会社鎌倉新書が実施した2024年の調査では家族葬は50%、直葬・火葬式の割合は9.6%に達しています。つまり、多数の親族の手を借りない葬儀が過半数を超えているのです。
出典:鎌倉新書「いい葬儀」の「お葬式に関する全国調査からみる葬儀費用の推移・変化(2013年~2024年)」 拡大画像表示
出典:鎌倉新書「いい葬儀」の「お葬式に関する全国調査からみる葬儀費用の推移・変化(2013年~2024年)」 拡大画像表示
近年、都市部を中心に「家族葬」や「直葬」といった簡素な葬儀が主流になりつつあります。多額の費用をかけず、身内だけで静かに見送りたいというニーズは、現代のライフスタイルや経済状況に合致しているといえるでしょう。
また、新型コロナウイルス禍での「密を避ける」選択が習慣化した側面もあるとされており、「大勢が集う葬儀はしない」という価値観が定着したと考えられます。
一方で、複数の葬儀専門家への取材では、家族葬・直葬をめぐる親族・近隣とのトラブルが増えているとの声もあります。







