学校の授業で学ぶ歴史には、偉人たちの輝かしい功績や「すごい」エピソードが数多く登場します。しかし、どんな人物にもそれだけでは語れない一面があります。歴史をひもとくと、「すごい」人の中にも、思わず目を疑うような「やばい」行動や選択が、数多く記録されているのです。
そんな「すごい」と「やばい」の両面から、日本史の人物のリアルな姿に迫るのが『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』。今回取り上げるのは、『源氏物語』に憧れて、自らも『更級日記』などの日記文学を残した菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)です。

『源氏物語』を読みたすぎて仏像を自作!? →1000年前のオタクが本気すぎたPhoto: Adobe Stock

『源氏物語』オタクを極めたすごい人

 菅原孝標女は『更級日記』という日記文学の作者。(本書で先に取り上げた)『蜻蛉日記』とは対照的に夫や子どもの話はほとんどなく、一貫して「物語が大好きなオタク」の目線で書かれた非常にめずらしい日記として有名です。

 子ども時代を父が赴任した上総国(千葉)ですごした彼女は、紫式部が書いた『源氏物語』の話を姉から聞きました。

 しかし当時、本は貴重だったので田舎では手に入らず、姉の記憶はうろ覚えであてになりません。

 そこで孝標女はわざわざ仏像をつくって「『源氏』を読ませてください!」と仏をおがみたおす日々を送りました。

『源氏物語』を読みたすぎて仏像を自作!? →1000年前のオタクが本気すぎたイラスト:和田ラヂヲ(『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』より)

 12才のときに京へもどり、ついに親戚から『源氏』全巻をもらった彼女は「だれにも邪魔されずに1巻ずつ寝っ転がって読める! 幸せすぎる! この幸せに比べたら、みんながあこがれる皇后の位くらいなんてどうでもいい!」とうっとりし「わたしはいまは美人じゃないけど、年頃になれば光る源氏の恋人みたいにキレイになるんだもん♡」と、いきいきとした妄想爆発日記を書きました。

 紀貫之と藤原道綱母がまいた女性文学の種は、紫式部が花咲かせ、のちの世に多くの作家を生みました。そのひとりが孝標女だったのです。

(本原稿は『東大教授がおしえる 超!やばい日本史』からの抜粋です)