BYDが発売した軽自動車EV(電気自動車)「RACCO」。日本市場に与えるインパクトは大きい 写真:BYD提供
国内の新車価格はこの10年で大きく上昇し、一般ユーザーにとって新車は“高根の花”となりつつある。一方、ホンダ、日産自動車、三菱自動車は販売台数が減少する中でも売上高を維持してきた。その背景には、自動車産業特有の収益構造がある。特集『自動車 解体』#12では、データを基に国内メーカーが抱える「値上げの構図」を読み解くとともに、日本市場に参入したBYDがもたらす新たな競争の行方を探る。(ダイヤモンド編集部 大川哲拓)
値上げで台数減を補う“負け組3社”
BYD軽EV「199.5万円」の脅威
「199万5000円」――。
中国BYDの日本法人が7月28日に発売した軽自動車のEV(電気自動車)「RACCO(ラッコ)」のエントリーモデルは、国の補助金適用後の実質価格を199万5000円に設定した。
この価格は、日本の自動車メーカーにとって、単なる新型車の値札ではない。電動化や安全装備の充実、原材料高騰を背景に、各社が新車価格を引き上げ続けてきた中で、「200万円を切る軽EV」が投入された意味は小さくない。
実際に、この10年間で人気車種の価格は大きく上昇した。トヨタ自動車「ノア」のエントリーモデルは2017年の246万円から26年の299万円へ、ホンダ「ステップワゴン」は228万円から334万円へ、日産自動車「セレナ」は231万円から278万円へと値上がりしている。
かつて一般ユーザーでも手が届いた価格帯は年々遠のき、新車は“高根の花”となりつつある。
では、なぜ日本メーカーはここまで値上げを続けてきたのか。その答えは、販売台数と売上高(いずれも海外を含む)の推移を見ると浮かび上がる。
トヨタが販売台数を堅調に伸ばす一方で、ホンダ、日産、三菱自動車はコロナ禍以降、販売不振に苦しんでいる。
過去10年間の販売台数では、トヨタが7%増だったのに対し、ホンダは26%減、日産は45%減、三菱自は13%減と大きく落ち込んだ。ところが売上高に目を転じると、ホンダは37%増、三菱自は50%増、日産も横ばいを維持しているという、一見すると不可解な現象が起きている。
販売台数が激減しているにもかかわらず、売上高を維持・拡大できた理由は明快だ。各社は車両価格を引き上げることで、1台当たりの販売単価を高め、販売台数の減少を補ってきた経緯がある。
国内の自動車メーカーにとって、それは収益を維持するための現実的な経営判断だった。
しかし、BYDが199万5000円という価格でRACCOを投入したことで、その前提が今後も通用するのかが問われ始めている。
次ページでは、トヨタ、ホンダ、日産、三菱自の過去10年間の1台当たり販売単価の推移を比較するとともに、各社を代表するコンパクトカーや軽自動車のエントリーモデル価格がどのように上昇してきたのかをデータで検証する。その分析から、ホンダ、日産、三菱自の"負け組3社"が価格転嫁に頼らざるを得なかった「値上げの構造」と、BYD「RACCO」が突き付ける日本メーカーへの新たな試練を読み解く。








