『風、薫る』第9回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第9回(2026年4月9日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)
何もいえない虎太郎、切ない
風の導き。ついにりん(見上愛)と直美(上坂樹里)が出会う。
出会いはこの回の終わり頃。12分40秒過ぎた頃だ。
まずは順番に見ていこう。ドラマではりんと直美のシーンが交互に出てくるが、ここではわかりやすくりんと直美を各々(おのおの)まとめておく。
まず、りんパートから。
「負け戦を長引かせてはなりません」
美津(水野美紀)はりんに、東京にいる叔父の信勝(斉藤陽一郎)の家に行くようにとお金を渡す。
と、そこでドンドン戸を叩く音がして、もう奥田の家から追っ手が来たのかと思ったら、虎太郎(小林虎之介)だった。
りんの婚家のほうで火事があったから心配になって訪ねてきたのだ。そのままりんは虎太郎をボディガードのようにして船着き場まで行く。荷車のなかに隠してくれたのだ。そこから川を下って東京まで。
船着き場はりんと虎太郎の思い出の場でもある。いつもここで語り合い、手に触れたのもここ。
ふたりで逃げたらドラマティックだけれど、虎太郎はりんと、その娘である環(宮島るか)を見送る。
またあやしい追っ手かもしれない人物が現れ、虎太郎は懸命に妨害する。だが、その人は単なる酔っぱらいの通行人だった。酔っぱらいの亀吉(三浦貴大)ではなかった。
「くれぐれもよろしく頼みます」と船頭にりんを託し、虎太郎は「りん、俺、俺……」とだけ言うが、そのあとの言葉が出ない。りんは「ありがとう」とだけ。意外とあっさり。虎太郎は大きく手を振るだけ。
あまりに淡い淡い初恋。初恋は実らないものとはいえ、りんと虎太郎のすれ違いはかなり残念な感じだ。ものすごく激しくかなしい別れ方をしたわけではなく、自分たちの意思を明確にする前に、流されるように離れていってしまった。







