研ナオコ怪演!朝ドラでの「昔話風ナレーション」起用には深いワケがあった〈風、薫る第5回〉『風、薫る』第5回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第5回(2026年4月3日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

捨松を演じる多部未華子、大河ドラマみたい

 朝ドラじゃなくて大河ドラマ?

 元家老で立派な父・信右衛門(北村一輝)が亡くなった。ドラマ開始、わずか4回で。

 死因はコロリ。陰鬱(いんうつ)に第5回がはじまる、と思いきや――。

 舞台は変わって、東京の鹿鳴館。

 明治16年(1883年)、コロリの流行が収まってきていた頃、多部未華子演じる捨松と、高嶋政宏(「高」の表記は、正確には「はしごだか」)演じる陸軍卿・大山巌の結婚式が華やかに行われていた。

 踊る捨松と大山。捨松とはずいぶん変わった名前である。幼名は咲子だったが、アメリカ留学をきっかけに「捨松」と改名した。彼女の母が、アメリカに「捨て」るが、帰ってくる日を「待つ」という意味でつけたもの。当時は決死の覚悟のアメリカ留学だったのだ。

 そして、無事に帰ってきた捨松は、旧幕府派の会津(捨松)と新政府派の薩摩(大山)という敵同士で結婚するという画期的なことを行った。

 ちょうどBSで大河ドラマ『八重の桜』の再放送が終わったばかりで、そこで描かれたのがこの戦争の話だった。いまから150年くらい前は日本国内で戦争が起こっていて、同じ日本人同士が敵味方に分かれて、いがみあっていた。亡くなった信右衛門の殿は新政府についたから土地が戦場と化さずに済んだというようなことを第1回で語っていた。

 捨松と大山の結婚は平和の象徴のようなものだろう。

 朝ドラというより大河ドラマのようになってきた。主人公のりん(見上愛)と直美(上坂樹里)はどこへいった?

 脚本家の吉澤智子は、第1週の試写のあと行われた囲み取材で「捨松が物語の大きなキーになっていきます」と語る。「りんと直美のメンターというような存在です。この時代、捨松のようにアメリカでの医療を見たことがある人はとても稀(まれ)で、捨松はいろんな意味でふたりに影響を与えます」