1980年代には1000ドルの時計が、2020年には数十万ドルに…ロレックスの異様なまでの高騰を支える「買い手」はいったい誰なのか写真はイメージです Photo:PIXTA

価格の高騰が止まらないロレックス。特に人気モデルのデイトナは、2020年には中古市場で数十万ドルの値がつく事態となっている。実際に購入するには非現実的な値段となってしまったが、果たしてロレックスを買い支えているのは誰なのか?バブルの源流を辿っていくと、ある残酷な現実が浮かび上がってきた。※本稿は、大阪大学大学院経済学研究科教授のピエール=イヴ・ドンゼ『ロレックスの経営史-「ものづくり」から「ゆめづくり」へ』(大阪大学出版会)の一部を抜粋・編集したものです。

新作をほとんど出さないのに
売れ続けるロレックスの不思議

 1990年以降、ロレックスのマーケティング戦略は根本的に変わることはなかった。エクセレントな人のためのエクセレントな腕時計という、前時代に確立されたデザインが今日まで続いているのである。

 このようなポジショニングは、大きな変化を遂げつつある業界にあっては、保守的と受け止められるかもしれない。しかし、これこそがロレックスの強さであり、エクセレンスについてのナラティブに正当性を与えているのである。

 この時期に発表された主な新作モデルは、2012年に発売されたスカイドゥエラー・アニュアルカレンダー・デュアルタイムである。この時計は技術的な面では真に斬新なものであるが、しかし、デザイン性はデイデイトを受け継ぎ、ブランドの継続性に沿ったものである。

図表:ロレックス・スカイ・ドゥエラー(2012年)同書より転載