同じ英語の辞書を使うりんと直美

 りんは「不思議の国のアリス」の世界のような外国雑貨店の店員、直美は華やかなドレスで着飾った女性たちが集う鹿鳴館のメイドと、西洋文化どっぷりの場所で働くことになった。絵面的にキラキラ感があって良き。

 ふたりして、これまで生きてきた場所からちょっとだけ外に飛び出したことになる。

 そして、ふたりは出会っただけでなく、ひとつ接点ができる。

 英語の辞書だ。りんは店で外国語がまったく理解できないので、勉強することにする。そのとき、手にしたのが、英語の辞書。あとで、教会に挨拶(あいさつ)に行ったとき、直美が持っている辞書が自分と同じものと知って、うれしそうだった。

 こんなふうに共通点ができたとはいえ、りんのほうは直美に対してネガティブな気持ちは持っていないが、直美のほうはりんに対していい感情を抱いていない。

 第11回では、りんが偶然出会った紳士から仕事や家を斡旋(あっせん)してもらったと聞いて、そんなうまい話はない、だまされているのだと直美は考えたが、そんなことはなく、順調にいっていると吉江(原田泰造)から聞いて驚く。

「えっ、じゃあの子だまされるどころか、仕事も住まいもあてがってもらったってことですか?」
「はい、本当によかったです」

 直美はりんの運の良さが、たぶん忌々(いまいま)しい。吉江はそんなこと全然意に介さず素直に他人の幸せに微(ほほ)笑んでいる。「士族ってだけで」と偏見をもつ直美だが、「娘のため、生きるため、できることは何でもやろうと思って」とりんが英語の勉強もしていると聞き、驚く。

 いまのところどんなに相性が悪そうでも、りんと直美が同じ辞書を使っているのはなかなかドラマチック。ふたりはご縁があるのだと思う。

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