「名前や肩書より…」明治の商人が発した“人物を評価する物差し”に納得しかない〈風、薫る第12回〉『風、薫る』第12回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第12回(2026年4月14日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

役に立たなくても生きていける社会

 たったひとりで店番をしていたりん(見上愛)がフランス人客を前に困っていたのを助けてくれたのが島田健次郎(佐野晶哉)。「新しく生まれた言葉や外国語に造詣(ぞうけい)が深い。りんの良き相談相手になっていく」人物だ。

 朝ドラ出演が決まったときの佐野晶哉さんのコメントを紹介しよう。

「6年前、僕が所属するAぇ! group を結成した当時から、ばあばに『まぁはいつ朝ドラに出るんや?』って急かされていました。『ばあば、まぁ朝ドラに出るよー!』。叶(かな)えられてよかった。

 親孝行おばあ孝行できます。

 たくさんの方から長年愛されてきた朝ドラに、『風、薫る』に出演できることを心から光栄に思います。明治という激動の時代を強く生きるシマケンは時代を象徴するようなキャラクターです。

 少しの希望も溢さないように、皆さんの朝に温(ぬく)もりの風が吹くように、一瞬一瞬を大切に作品と向かい合いたいと思います」(25年9月13日発表の広報資料より)

 この島田健次郎。かなり変わった人物のようで、フランス語ができるから学校の先生?とりんに聞かれ、「そんなにまっとうに見えるかな」とショック(驚いて少し傷つくこと)を受ける。「どうしてそんなに何者かにしたがるんですか」とりんに問う島田。

 りんは「役に立つお仕事や役目がないと生きていけない」と思っているが、彼は、役に立たなくても生きていける社会の方が「僕は助かりますけどね」と言う。島田、いたってまっとうではないか。でも、そんな彼の考えがまっとうではないと思われるのが社会なのである。

 島田はフランス語のみならずドイツ語やオランダ語も話せる。「生きる上で、役に立たない言葉を知るのが好き」と聞いて「変わり者」とりんは笑う。