文化資本とは、こうした“深いまなざし”を通じて、自分の人生や他者の存在を立体的に理解する力なのです。

 たとえば、ある人が毎日早起きして掃除をしているとします。それを見て「真面目な人だ」と判断するのは“視”に過ぎません。

 なぜそれをやっているのか、誰に見せるためなのか、それとも信念や価値観に基づいているのかまでを掘り下げて見ていくのが“観”と“察”です。

 2023年公開の映画『パーフェクトデイズ』(監督:ヴィム・ヴェンダース/主演:役所広司)は、まさにこの「視・観・察」を体現する作品です。

 主人公・平山は、東京でトイレ清掃員として働く中年男性。

 毎朝決まった時間に目を覚まし、髭を剃り、植物に水をやり、決まったカセットテープを流しながら軽自動車で現場に出勤し、公衆トイレを磨きます。

 この行動を「視る」と、多くの人は「単調で退屈」と感じるかもしれません。

 けれど、「なぜそのルーティンを守っているのか」「彼にとっての“やすらぎ”はどこにあるのか」を“観”て“察”していくと、彼の生き方そのものに深い美意識が通っていることに気づかされます。

 この映画には、アメリカンドリームをつかむような、“西洋的成功観”はありません。

 でも、そこにあるのは、生活の構え方に宿る哲学と美意識、そして文化資本のにじみ出る豊かさです。

文化・教養資本の豊さは
表面的な“知識の量”では計れない

 このような文化・教養資本は、次のような人にとって、まさに差を生む武器になります。

・SNSで発信しているが、言葉が軽く感じられる
・営業やマネジメントをしているが、なぜか信頼されにくい
・キャリアはあるが、人としての“余白”や“遊び”が足りないと感じる
・コンサル・専門職・士業など、「思考」を商品にしている人

 こうした人にこそ、「1つの美意識を持っている」「世界との向き合い方を自覚している」ことは、説得力・深み・信頼感という無形の価値をもたらします。