「体にいい油」を選んでいるのに、かえって不健康になっていないでしょうか。問題は油の種類だけではなく、量と“変性”です。酸素・熱・光で傷んだ油は、健康の味方どころか負担にもなる可能性があるからです。
東京農業大学で栄養について長年研究し、医師としても活動する田中越郎氏の新刊『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』をもとに解説します。
「変性した油」が一番ヤバい
脂肪に関しても、体によい脂肪と、体に悪い脂肪とがあります。
言わば善玉脂肪と悪玉脂肪ですね。たとえば、「オメガ3脂肪酸は体によい」や、「トランス脂肪酸は体によくない」など、いろいろな話が飛びかっています。
これらは半分正しく半分まちがっています。なぜまちがっているのか?
それは重大な2つの視点がすっぽり抜けているからです。
1つ目は、量を考慮していないことです。どんなに体によさそうな脂肪酸でも、摂りすぎは体に悪影響です。
たとえそれが必須脂肪酸であろうと、またオメガ◯脂肪酸であろうと、摂りすぎはカロリー過剰となりダメです。
逆に言えば、体に悪そうな脂肪酸でも少量ならそれほど害を気にしなくて大丈夫でしょう。
2つ目は、市販の油脂は、作ってから口に入るまでの間に変性しやすいことです。
変性した油は、トランス脂肪酸をはるかに凌駕するほど体に悪い影響を与えます。
したがって、脂質を摂取するとき、最も気をつけなければいけないことは、いかに変性を避けるか、ということです。
油の変性がおこる主な原因は、酸素、熱、光の3つです。
油を扱う際には、なるべく空気に触れさせない、なるべく熱を加えない、なるべく光をあてない、という3点に注意してください。
容器に入った市販の精製油は必ず空気に触れるので、多少の酸化は絶対に避けられません。
しかし抽出する前の脂質ならば肉や種子の中に閉じ込められた状態なので直接空気には触れません。
そういう意味では、動物や植物をそのまま食べるのがベストです。
すなわち刺身やナッツやアボカドの中の脂肪は空気と遮断されており、酸化されていない脂質が摂取でき、体にいいと言えます。
そして熱変性を防ぐには、熱を加えないことです。
具体的には、生のまま食べるのが一番です。
もし熱を加える場合はなるべく低い温度の方がよいでしょう。
焼くよりは煮る方が温度は低くてすみます。
つまり魚の油を摂取する際、ベストは刺身、次が煮魚です。
焼き魚の場合はそれなりの熱変性を覚悟しなければなりません。
光による変性に関しては、家庭向けの料理用油は、高価なものは遮光ビン(茶色の着色ビン)に入っていますが、安価なものは透明なペットボトルに入っています。
台所での油の保存場所は冷暗所にしてください。
くれぐれも日が当たる棚には置いてはいけません。
なお、冷蔵庫は温度が低すぎて固まってしまうことがあります。
(本記事は、書籍『医者が教える 栄養学的に正しい最高の食事術』から一部抜粋・編集した記事です。)
●東京農大名誉教授・栄養学の専門家である医者が教える「栄養学的に正しい」食事の大原則
●「健康」はもちろん、ダイエットから仕事まで「いつもの食事」が人生を変える!
世間には数多くの健康法があふれています。
そして健康意識の高い人ほど、新しい情報を入手し、自分の生活に取り入れています。
しかし、その結果「本当の健康」を得られている人はどれほどいるでしょうか。
ひとつの論文やエビデンスだけを信じた食事では、栄養が偏ってしまいます。
また「健康意識」の高まりを狙った企業のマーケティングの影響で「必要のない食品」や「効果の薄いサプリ」を購入してしまう可能性もあるのです。
そんななか、食事対する必須知識として「栄養学」への関心が高まっています。
本書では、東京農業大学で栄養学と生理学の研究を続け、医師でもある著者が「栄養学的に正しい」最高の食事術を紹介します。
誤解しがちな栄養に関する知識を正し、実生活のなかですぐに取り入れることができる具体的な食べ方や食材、食品がふんだんに掲載されています。
基本となる知識と具体的な食事術を学ぶことで「健康法」迷子から抜け出し、食事によって人生が変わる1冊です。
主要目次
第1章 まず知るべき「栄養と食品」の基本
栄養バランスは毎日考えなくていい─「1週間」でつじつまが合えばOK
「完全栄養食」を信じるな─「これだけを食べれば大丈夫」などありえない
トクホと「健康食品」はまったくの別物─機能性食品の違いをおさえる
第2章 「病気と栄養」の危ない関係
ジュースが危ない本当の理由─果糖とブドウ糖はヤバすぎる
「体にいい油」も要注意─変性すれば、すべて悪玉
「コーラで歯が溶ける」は本当─リン酸の強さとその代償
第3章 栄養学的に「ヤバい」食習慣
ファストフードで地雷を踏むな─シェイクのヤバさを知る
黒烏龍茶でチャラにはならない─「焼け石に水」で食べ過ぎを招く
プロテインが逆効果になる?─肝臓・腎臓が酷使される理由
第4章 頭が悪くなる「脳をダメにする」食事
ビタミン不足は静かに脳を鈍らせる─頭が悪くなる仕組み
「カルシウム不足でイライラする」のは本当か?─科学的根拠はない
「コーヒーを飲まないと頭が回らない」は危険信号─カフェイン依存のリスク
第5章 「体によさそう」に惑わされないための知識
野菜ジュースで「野菜」は摂れない─ビタミンCも食物繊維も抜けている
「グルテンフリー神話」に惑わされるな─アレルギーがなければ無視していい
サプリメントは買わなくていい─価格も品質も信用できない
第6章 「食べないほうがいい」食品の誤解を解く
コレステロールは敵ではない─体の必須成分と動脈硬化の関係
「白米を食べると太りやすい」のはなぜか─長所と短所を理解する
「うま味調味料=危険」は思い込み─グルタミン酸ナトリウムの正体
第7章 誰でもすぐに実践できる「栄養学的な食習慣」
チェーン店で健康的に食べる方法─最強はリンガーハットの「ちゃんぽん」
パフォーマンスを上げるには「お酢」を飲む─最速でシャキッとする
「腸活」ブームが見落としているもの─腸内細菌は大腸にいる
第8章 「体調と体質を改善する」食事術
風邪をひいたらホットジュースを飲む─「ダイダイ湯」「生姜湯」がいい
食べるべき食品ベスト1は「納豆」─ビタミンKが爆増する発酵の力
「なんとなく不調」なときは食べものを疑う─5つの食事リセット術
第9章 「ストレスから体と心を守る」食事術
老化と病気は抗酸化物質で防ぐ─「ポリフェノールたっぷり」に騙されない
「おいしく・安く・栄養豊富」な旬の食材を選ぶ─無駄にお金をかけなくていい
強いストレスには「動物性たんぱく質」と「ハーブティー」─メンタルを整える食事
第10章 「やせながら元気になる」栄養学的ダイエット術
「2日で1.5kg」は誰でもやせられる─大切なのは継続できるかどうか
リバウンドを防ぐための小さな工夫─体だけではなく「心の健康」を維持する
「体脂肪率」に振り回されるな─大切なのは「経過」を追うこと
第11章 「健康なまま長生き」するための食事術
「空腹は最強のクスリ」は本当か?─実践してわかった長所と短所
40歳から筋肉は勝手に減り続ける─寝たきり回避には「たんぱく質」が必須
発がん性物質を避けるには「焼く」よりも「煮る」─肉はマリネがおすすめ