国防大学元教授劉明福氏の説く
「中国夢」とは?

 そもそも「中国夢」とはどこから降ってきた思想なのか?

 2010年1月1日、『中国夢』という後に国民的ベストセラーとなる書籍が中国で出版された。サブタイトルは「ポストアメリカ時代の大国的思考と戦略的位置づけ」で、作者は中国人民解放軍大校、国防大学教授(出版当時)の劉明福氏(Liu Mingfu)である。

 劉氏は同書を出版した2010年を「中華民族がチャイニーズドリームを追求する起点」だと主張する。理由は、ちょうどこの年に中国が日本をGDP総量で凌駕し、「アメリカを追いかけ、追い越す準備が整ったから」だと同氏は書籍やインタビューで説明してきた。

 2013年7月現在、すでに国防大学を定年退職している劉明福教授は1969年に入隊、1979~98年まで約20年間山東省にある済南軍区政治部にて理論研究と政治工作研究を行い、それから国防大学に移籍。同大学では「軍隊建設学」の理論を形作ってきた。同大軍隊建設研究所も歴任している。

 チャイニーズドリームをめぐる劉氏の主な主張は以下のとおりである。

「世界ナンバーワンの強国になることが21世紀における中国最大の目標だ」
 「21世紀の中国は、仮に世界ナンバーワンの強国になれなければ、必然的に遅れた、淘汰される国家となってしまうだろう」
 「世界ナンバーワンを争う競争はゼロサムであり、誰が世界の衝突を主宰するかという問題である。中国は自らを救うだけでなく、世界をも救わなければならない。我々には世界を引っ張る用意がなくてはならない」
 「中国が台頭し世界ナンバーワンになれば、仮に中国の資本主義レベルがアメリカより成熟していたとしても、アメリカは中国を封じ込めようとするだろう」

 私の手元には劉明福教授が2013年1月に出版した『中国夢』(改訂版)がある。以下、参考までに、本書の内容を簡単レビューしてみることにする。

 劉氏は「不断に国力を増強し、世界ナンバーワンの強国になることが中国にとって世紀の目標であり、そのためにはアメリカと競争しなければならず、これは既存のナンバーワン国家と潜在的なナンバーワン国家との争いである」と説く。

「前者は覇道、後者は王道であるから、中国の台頭こそが世界平和につながる」と赤裸々に主張する。

「アメリカは過去においても台頭してきた国家(本書はイギリス、日本、ソ連をケースとして挙げている)を封じ込めてきた歴史があり、今回も間違いなく対中国封じ込め戦略を実践してくる」、よって「アメリカに対して幻想を抱くことは自殺行為だ」と国民のナショナリズムを喚起する。