相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……
様々なブランドを大ヒットに導いてきたクリエイティブディレクター・水野学氏。
さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。
いったいどうしたら、多くの仕事を抱えながら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか? 
水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。

「アイデアはひらめくもの」は勘違い? プロが実践する、爆速で正解を導き出すための「午前中の過ごし方」とは?Photo: Adobe Stock

ミーティングで次々にアイデアが出る理由

 僕の仕事のスタートは90分のランチミーティングからですが、では午前中は何をしているのかというと、「インプット」の時間に充てています。

 打ち合わせでアイデアが出ることがほとんどですが、それができるのは、十分なインプット時間があるからです。幅広く、さまざまな情報を頭に入れておくことがアイデアの源泉となり、また判断を早めてくれるのです。

 人の感動をどう動かすか、というのが僕たちの仕事です。ならば、感情の設計をするにあたって、人の感情がどう動いていくのかを理解せずには、それはできません。

 世の中はどう動いているのか。人々はどんなことに関心を持っているのか。それはどう変化しているのか。次にどんな変化が起きそうか。そうしたことを意識しておく必要があります。実は人という存在を相手にする多くの仕事がそうかもしれません。

 その意味では、仕事関連の「資料」だけをインプットしていくだけでは、足りないと思っています。もちろんクライアントやプロジェクトに付随するさまざまな情報には強いアンテナを立てますが、それ以外にも広く浅く、いろいろなところにアンテナを立てておく。それが、思わぬアイデアにつながったりするのです。

 午前中のインプットでは、いろんなことをしています。新聞を読んだり、テレビのワイドショーをザッピングしたり、雑誌に目を通したり。ネットニュースを眺めてみたり、SNSを開いてみたり、YouTubeを追いかけてみたり。

 本を読むこともありますし、妻と話をすることもあります。もちろん仕事の資料を読んだりもするし、考えごとをする時間になることもある。僕にとっては重要な時間です。

 傍目には怠けているように見えるかもしれません(笑)。でも逆に、だからいいのだと思っています。思わぬところで、思わぬ形で出会ったものが役に立つことは少なくないのです。

 多くのプロジェクトを同時に進めていても、なぜ、落ち着いて対応できるのか。それはおそらく、アイデアを出すのも早く、判断も早いからだと思います。打ち合わせの早いタイミングでアイデアを見つけ、それをそのままクリエイティブに落とし込んでしまう。

「持ち帰って次回」をやらないので、無駄な時間を使わない。その場でどんどん仕事を進めていく。それができるのは、打ち合わせ時に脳を最高の状態に持っていくことと、すばやい判断を可能にしてくれる事前のインプットのおかげだと思っています。

 僕たちの仕事は、大きく問題発見と問題解決に分かれています。打ち合わせでは、まずは問題発見から始めます。難しいのは、問題は必ずしも明らかになっていないということです。

 ここが問題であると認識されていることもありますが、認識されていない場合も多い。問題ではないと思われていないところにこそ、問題が潜んでいたりするのです。

 問題が明らかになっていなければ、問題の解決はできません。だから、問題を明らかにする、あるいは共有するところから始める必要があります。

 多いときには打ち合わせ時間の半分ほどを問題発見に費やすこともあります。ここで求められるのは、実は必ずしもクリエイティブのスキルではありません。だからこそ、幅広いインプットが活きてくる。それを理解したのちに、問題解決に進むことができるのです。

※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。