相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……
様々なブランドを大ヒットに導いてきたクリエイティブディレクター・水野学氏。
さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。
いったいどうしたら、多くの仕事を抱えながら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか?
水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。
Photo: Adobe Stock
長時間やればいいものができるわけではない
これはデザイナーやイラストレーターのような職業に多いのかもしれませんが、仕事にこだわるあまり、もうあと10分やればいいものになるのではないか、を繰り返してしまう傾向があります。
だから、時間があるだけやってしまう。終電までやってしまう。自分が疲れ果てるまで根詰めてしまう。かつての僕も、そうでした。
どうにかしてこれを変えたいと、ずっと思っていました。事務所を立ち上げた当初から、時間の区切り方を変え、スタッフとのやりとりの仕方やチーム編成を変え、試行錯誤を重ねました。
ノー残業デーのような制度をつくっても、結局持ち帰りで仕事をしたり、クオリティを諦めたりしては本末転倒。大事なのは、仕事そのものの仕組みを変えることと、意識の変革でした。「限られた時間の中でいいものをつくる」ことを前提に、仕事の仕組みそのものをつくり直す必要があったのです。
どうして長時間働いてしまうのかというと、デザイナーやクリエイター系の人たちは、学生時代にそう刷り込まれてきたからだと思っています。学生時代は時間がたくさんあり、納得がいく「作品」をつくるという感覚で取り組んでいた。長くやればやっただけいいものができる、という考えなので、集中が続く限り時間を費やしてしまいます。
物事を深く掘っていくことが好き、という性質もあると思います。だから、美術系のような進路を選択している。集中して掘っていくのが得意だから、ずっと絵を描いていられる。
しかし、本当は卒業制作にしても、「時間スポーツ」なのです。1年かけて取り組んだりしますが、与えられたその時間の中でいいものができるかどうかが問われている。そこに気づけないと、いつまでもやってしまう癖が抜けません。
結果的に、「まだ完成していないのに」と思えるものを出してしまうことになる。しかし、先にも書いたように「締め切りが完成」なのです。「まだ完成していないのに」と思ったとしても、締め切り時間が来たら、それが完成。ここにいかに早く気づけるか。
とにかくいいものをつくる、ということと、時間内でいいものをつくるということは、全然違うのです。とりわけ仕事になると、これは決定的な違いになる。
ここから早く「卒業」して、限りある時間の中でいいものをつくっていくタイプの人と、いつまで経っても時間を大切にできず、いいものができるまでやってやる、と時間に追われる人。この2つに分かれるのです。
後者は、結局締め切りにも間に合わなくなる。だから、その考え方からどうやって決別するか、思い切って別れを告げられるかどうかが大事になるのです。
※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。







