中国の大規模調査では、都市部に住む人ほどナルシシズム傾向が高いという関連が報告されています(※1)。ただし、都会に住むから自己愛的になるのか、もともとそうした傾向を持つ人が都会を好むのか、因果関係まではわかっていません。

 したがって、この研究だけで「都会の人は見栄っ張りだ」と断定することはできません。それでも、都市部では他人との比較が起こりやすく、自己演出や見栄のコストが膨らみやすい可能性は考えてよさそうです。

 また、暮らしの豊かさは、お金だけでなく、人との関係からも大きく左右されます。

 都市部より地方のほうが、見知らぬ相手への援助行動が起こりやすい場面がある、という研究もあります(※2)。

 たとえば、目の前で人が物を落としたとき、地方のほうが拾って声をかける人が多かったという報告があります。もちろん、これだけで「都会の人は冷たい」「田舎の人はみな親切」と一般化するのは無理があります。

 ただ、地域によって人との距離感や助け合いの見え方に差があり、それが安心感や暮らしやすさに影響することは十分ありうるでしょう。

 要するに、豊かさを決めるのは、年収の大きさだけではありません。どこで暮らし、何と自分を比べ、どれくらいお金と心の余裕を残せるかが大きいのです。

 年収1800万円でも、住居費と見栄の競争に飲み込まれれば、暮らしは苦しくなります。逆に、年収1000万円でも、固定費を抑え、過剰な比較をせず、人間関係の安心感がある場所で暮らせば、十分に豊かさを感じられます。

「もっと稼げば幸せになれる」と考えるのは自然なことです。けれども、本当に見直すべきなのは収入そのものではなく、その収入が削られていく生活環境かもしれません。

 年収を上げる努力と同じくらい、どこで、どんな基準に囲まれて暮らすかを考えることも、豊かな人生には重要なのです。

【参考資料・参考文献】
※1 Cai, H., Kwan, V. S. Y., & Sedikides, C. (2012). A sociocultural approach to narcissism: The case of modern China. European Journal of Personality, 26, 529–535.
※2 Wilson, S. B., & Kennedy, J. H. (2006). Helping behavior in a rural and an urban setting: Professional and casual attire. Psychological Reports, 98, 229–233.
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