また、一括売却ではなく、長期的・継続的に分割して取り崩すことで相場のリスク分散を行うという手もあります。毎月定額で取り崩したり、5年ごとなど複数回に分けて取り崩したりしていくのです。

 そして、最も難しいのが、(2)の「使うマインドを整える」戦略です。長期間にわたって「貯める」「増やす」ことだけに集中してきた投資家ほど、資産を「減らす」行為に強い心理的抵抗を覚えるからです。

 この抵抗を乗り越えるためにも、ある年齢になったら少額ずつ売却していくなどして、消費に充てる「取り崩しトレーニング」をしていきましょう。

 しかし、忘れてはならないのが人生の長さです。いまや「人生100年時代」といわれるほど寿命が延びました。仮に90歳まで生きるとすれば、65歳からの老後は25年間にも及びます。たとえ十分な資産を築いたと思っても、想定以上に長生きをすれば、資金が足りなくなる可能性も否定できません。

 この長寿リスクに対応するためにも、資産全体を老後の一定期間で使い切る計画ではなく、老後資金の一部を持続的に株式投資で運用し続ける視点も必要です。そのようにして、心理的な安心感と資金の持続性を両立させましょう。

出口戦略としての
資産取り崩し「4%ルール」

 前項の(1)と(2)の戦略をベースに出口をイメージしていくわけですが、資産の出口戦略の有名な理論に、「4%ルール」があります。

 これは、米国のS&P500をベースとした理論なのですが、株式で保有する資産の期待リターンが7%あるのであれば、そこから年間のインフレ率を仮に3%として差し引くと、年間4%までの取り崩しなら資産を減らすことなく投資益を享受できるという考え方です。

 例えば、資産が3000万円あるのであれば、4%は年間120万円です。公的年金の受給があったうえで、年120万円の取り崩しが加われば生活することはできそうです。漠然と「65歳の時点で3000万円を手に入れる」ではなく、その3000万円を使ってどう生活するのかを、具体的にイメージしておくことが大切なのです。

 この「4%ルール」は、過去の米国の市場データに基づいており、約30年間にわたって資産が尽きる確率が低いことが検証されています。しかし、このルールを日本の状況にあてはめる際には少し注意が必要かもしれません。