基本は「自律訓練法」、あくびがうつる「ミラー効果」

 まず挙げられるのが、精神科や心療内科でも取り入れられている「自律訓練法」だ。呼吸を楽にしながら体の各部位の力を順番に抜いていくことで、体が重く感じられ、リラックスから眠気へと導かれる。この手法が、うさぎのロジャーと一緒に旅をする物語の中に、自然な形で組み込まれている。

「体を楽にして」「横になって」など、体に入った力を順番に抜いていくよう本の中にさりげなく指示されている(C)飛鳥新社「体を楽にして」「横になって」など、体に入った力を順番に抜いていくよう本の中にさりげなく指示されている (C)飛鳥新社 拡大画像表示

 本書で頻繁に使われているもう一つの手法が「ミラー効果」だ。相手の仕草や表情を無意識に真似してしまうというこの効果を、本書は巧みに利用している。

「絵本の文面には【あくびする】という指示が度々入っています。読み手が眠そうにあくびをしていると、ミラー効果で聞き手もつられて眠くなり、あくびをしてしまうというわけです」(三橋さん)

【あくびする】の指示(C)飛鳥新社【あくびする】の指示 (C)飛鳥新社
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わざと退屈なストーリーにしている理由

 脳が興奮した状態では眠れない。ぐっすり眠るためには「退屈」になることが重要だ、と三橋さんは言う。

「ロジャーは繰り返しの言葉が多いことも特徴です。繰り返しが多いと物語が単調に感じられて眠くなる効果があります」(三橋さん)

「通常、絵本は子どもを楽しませるもの。でもロジャーは寝かしつけに特化しているので、眠くなるよう、あえて単調に感じるように作られています」(飛鳥新社編集者・矢島和郎さん)

スポーツ選手も実践する「イメージ法」で自己暗示

 多くのスポーツ選手が取り入れる「イメージ法」――目標を具体的にイメージして自己暗示することで、実際の身体動作をそれに近づける手法――も、本書の随所に登場する。

「『くったくた』『眠っちゃう』などの言葉が繰り返されることで、頭の中でイメージし、自己暗示をかけていくことができる。だから、聴いているだけで眠くなっていくのです」(三橋さん)

イメージ法(C)飛鳥新社イメージ法 (C)飛鳥新社 拡大画像表示

 こうした心理的手法に加え、日本語訳そのものにも工夫が凝らされている。

「目が覚めないように、破裂音を避けて訳しています。たとえば『パパ』は破裂音で、脳を覚醒させやすい。そのため『おとうさん』と訳しました。読む際に『おとぉ~さん』と息を吐くように発音すると、脱力しやすくなります。また、音を伸ばす言葉は息を長く吐くため緊張がほぐれ、副交感神経が働きます。そのため、音を伸ばす言葉を意識的に多用しています」(三橋さん)