読み聞かせの「仕掛け」を、大人がひとりで享受できる理由

 これだけの手法が有効に機能するには、実は条件がある。「読み手」と「聴き手」が存在する読み聞かせという形式だ。ミラー効果は読み手のあくびが聴き手に伝わることで成立し、自律訓練法も語りかける声があってこそ深く作用する。子どもを寝かしつける親が読むことを前提に設計されているからこそ、これらの仕掛けは機能する。

 では、一人で眠りたい大人はどうするか。水樹奈々さんによる朗読音声はその問いへの一つの答えだ。プロの声優が「読み手」の役割を担うことで、一人でも絵本のすべての仕掛けをそのまま享受できる。子ども向けに設計された眠りのテクニックを、大人がスマートフォン一つで利用できる形に変換したのが、この音声コンテンツの本質といえる。

「眠り方」は、誰も教えてくれなかった

 自律訓練法、ミラー効果、イメージ法、言葉の音響設計――これだけの手法が一冊の絵本に凝縮されている事実は、裏を返せば、私たちがいかに「眠り方」を体系的に知らないかを示している。三橋さんの言葉が刺さる。

「親や学校の先生から、生活習慣や礼儀、学習など、さまざまなことを教わってきた。でも『眠り方』については、誰も教えてくれなかった。睡眠は1日の約3分の1を占める、生きるうえで欠かせない営みなのに」(三橋さん)

 また、三橋さんはこうも語っていた。「ロジャーを読めば、“こうすれば眠くなるのか!”が分かります。子どもから大人まで、眠り方を学べる本だと思います」

絵本がなくてもできる、今夜からできる入眠法

書影『かんたん版 おやすみ、ロジャー』(カール=ヨハン・エリーン、飛鳥新社)『かんたん版 おやすみ、ロジャー』(カール=ヨハン・エリーン、飛鳥新社)

 最後に、道具も準備も必要なく今夜からすぐ実践できる入眠法を、三橋さんに聞いた。いずれも『おやすみ、ロジャー』を持っていなくても、手軽に試せる手法だ。

「寝る前の呼吸が大切です。4カウント息を吸って、7カウント止めて、8カウントで吐く――これを10回ほど繰り返してみてください。体がリラックスして入眠しやすくなります」(三橋さん)

「もう一つは自律訓練法です。手の力を抜いて、足の力を抜いて、お腹の力を抜いて……と体のパーツを1つひとつゆるめていくと、体が徐々に重く感じられ、眠くなっていきます」(三橋さん)

 どちらも寝ながらできる。特別な道具も、アプリも、絵本も必要ない。「眠り方を知らない」まま睡眠不足に悩んでいるなら、今夜一つ試してみてもいいのではないだろうか?