まず大前提として政府は決して認めないのですが、わが国の年金制度というのはすでに破綻しています。
本来であれば働く世代が収めた年金保険料をきちんとプールして運用して、その長期間にわたる運用益を含めて引退世代の生活費として年金を配るのが年金制度のスジであるべきです。
しかし日本の年金制度は、若者から集めた年金保険料をそのまま高齢者に分配する制度設計で始まってしまいました。
年金制度が始まった頃は、若者の人口は圧倒的に多く、高齢者の平均寿命は60代でしたから、少ない年金保険料で大きな老後保障が得られたわけです。
ところが現在では若者は人口的には少数派で、高齢者の平均寿命は80代です。この制度で辻褄があうはずがないのです。
それで現在の年金制度では、基礎年金の不足分を税金で補填します。よく政府は「収めた年金保険料と将来もらえる年金を比べるとプラスですよ」と主張しますが、経済的には嘘があります。不足を補填する税金分が計算式からは抜けているからです。
実際には若者世代は、年金保険料に加えて収めた所得税や消費税が高齢者の年金に補填されています。きちんと試算すれば年金は若者にとってマイナスな制度ですが、そこは政府がつまびらかにすることはありません。
次に、この状態をカイゼンするにはどうすればいいでしょうか?政治家になったつもりで考えてみましょう。
負担増で支給減の現役世代が
引き受ける“トンデモない副作用”
やれる「改革」はふたつあります。
現役世代が支払う年金保険料を増額すること。そして高齢者世代がもらえる年金を減額することです。恐ろしいことに、これはふたつとも現在進行形でその方向に制度が進みつつあります。
まず先に高齢者世代がもらえる年金を減額する手口から解説します。日本経済をインフレにすればいいのです。
現在、国民年金に加入してきた高齢者は月額で約6万6000円の年金を受給しています。サラリーマンの場合、厚生年金で月15万円程度というのが平均的な高齢者の年金額です。
どちらの場合も暮らしはぎりぎりという金額ですが、そこにインフレが起きています。日銀がターゲットにしているのは年率2%のインフレですが、その場合にインフレスライドで増える年金額は約1.6%に抑えられます。
仮にいま35歳の若者が、年金を受け取れる30年後にどうなっているかというと、平均でインフレ2%、年金1.6%の増加ペースで老後を迎えた場合にはもらえる年金の価値は1割は少なくなる計算です。これが年金の実質的な支給額を減額する制度設計です。
一方で現役世代が納める年金の増額は、これまで免除されてきたひとたちを対象に加える方法で実行されていきます。直近では月20時間以上働く従業員は、段階的にすべて厚生年金加入が義務付けられるようになりました。今回議論されている制度改革では働く時間に関係なく、収入に応じて年金加入が促される方向に進むでしょう。
これはどちらも現役世代に不利になる形での制度です。それが現在進行形で進んでいると同時に、将来もっと悪くなる方向にしようという議論が与党の間でなされたというのが直近の報道です。
では、わが国の年金制度がそもそも破綻していることを仮に政府が認めた場合は、他の改革方法はないのでしょうか。







