藤沢モスクの図面藤沢モスクの図面 提供=筆者

「モスク建設反対!」「レイシストは帰れ!」――。藤沢駅前が騒然となったモスク建設を巡る、反対派と擁護派の激しい衝突。国内のムスリム人口が急増する中、この対立は全国各地へ飛び火しようとしています。しかし騒動の裏側を覗くと、単なる「治安への不安」とは異なる不自然な点が見えてきます。実際の犯罪データや、すでに25年共生している街の実態とはかけ離れた「恐怖」は、一体誰が何のためにつくりあげたのか? マイノリティを標的にして、反対運動を盛り上げる“本当の狙い”とは?(ノンフィクションライター 窪田順生

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モスク建設反対運動が
急に盛り上がった裏事情

「モスク建設はんたーい」「レイシストは帰れ!」

 シュプレヒコールと激しい罵声が飛び交うなかで、デモ参加者と警官隊、そして動画撮影者やメディアがひしめき合い、日曜昼下がりの駅前は騒然となった。

 これは4月12日、神奈川県・藤沢市のJR藤沢駅周辺で行われた「モスク建設反対デモ」の一幕である。

 主宰したのは、「ジョーカー議員」として知られた埼玉・戸田市議会議員で、日本大和党党首の河合ゆうすけ氏。藤沢市内の私有地に、イスラム系宗教団体が自費で建設するモスクの計画を中止させるために、わざわざ埼玉からやってきたのだ。

 これを迎え撃つのが、このようなデモを「ヘイトスピーチ」だと厳しく攻撃している「市民」のみなさんだ。SNSで拡散されている動画をみると、河合氏に対して「てめえ、ふざけんなよ!」と怒鳴り散らすような「市民」の方もいらっしゃって、憎悪と対立がかなり深まっている。

 ……という話を聞いても「へえ、神奈川でそんな騒ぎがあったのか」くらいの薄いリアクションの方がほとんどだろうが、これはもはや他人事ではない。そう遠くない未来、みなさんがお住まいの街でも起こり得る光景である。

 日本国内のムスリムが急速に増えているからだ。

 早稲田大名誉教授の店田広文さんらの調査「日本のムスリム人口」によると、国内のムスリムは20年前から約3.9倍に急増して、2024年末時点の推計で約42万人。これはひとつの中核都市くらいの人口で、今回舞台になっている藤沢市の44万2956人(26年4月1日現在)とそれほど変わらない。

 しかも、この状況はさらに加速していく。「外国人材の受け入れ拡大」を推進した安倍政権の路線は高市政権でもしっかり引き継がれ、2028年までに特定技能外国人・育成就労外国人の在留者数の総計として123万人の外国人労働者の受け入れを表明している。