年間100世帯以上の相談にのる発達障害専門のFPで、ADHD当事者でもある岩切健一郎氏が書いた『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』が発売中だ。本書には「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」など、発達障害の有無にかかわらず、多くの口コミが寄せられている。
同書の刊行に寄せて、著述家でADHD当事者でもある小鳥遊(たかなし)さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

安月給で小遣いは月3万。それでも買わずにいられなかった“50万円の品物”とは【発達障害・お金のリアル】Photo: Adobe Stock

高価な楽器を衝動買いして、周囲がザワつく

 ADHDの特性のある私は、興味のあることにはものすごい行動力を発揮します。
 それは、長所にもなりますが、こと金銭管理となると、ちょっと困った行動に出ることがあります。

 私は趣味でクラリネットを吹いています。クラリネットは高価なことが多く、おいそれと買えません。

 ある日、プロのクラリネット奏者と一緒に飲んでいるときに、
「僕の使っていた楽器を売りたいのですが、誰か買いませんか?」
 という話をしていました。

 反射的に、「私が買います!」と手を挙げて、その翌日には、お宅へお邪魔して現物を取りに行ってしまいました。

 その楽器は、新品なら100万円はくだらないものです。中古とはいえ、プロ奏者が使っていた確かな楽器となると、ポンと出せる金額ではありません。たしか50万円くらいでした。

 その時の私にとって50万円なんて超大金です。それなのに、私はほとんど反射的に購入を決めてしまいました。

 好きなことになると、常識のタガが外れたように動いてしまう
 そんな自分の特性が、見事に出てしまった出来事でした。

 当時、いろいろ理由があって30歳で初めて社会に出て働き始めたばかりの私。実家暮らしで安月給の私にとって、身の丈に合わない出費をしたわけで、周囲の人たちは一気にザワつきました。

 もちろん、自分の貯金額を常にチェックできていて、その上で買えると判断していたら、まったく問題はありません。

 しかし、当の本人は金銭管理が無理すぎて、月3万円と決めた小遣いすら使い込んで翌月の小遣いを頻繁に前借りする始末でした。

節制が「仕組み」でゲームのように

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』では、こんな一節があります。

 例えば、「ついお金を使ってしまうので貯金できない」と困っている人に、「毎月3万円貯めましょう」とアドバイスしても、「それができなくて困っているんだよ……」ということになるわけです。
 脳の伝達物質のせいかもしれないことと戦うのはいったんやめましょう
 その代わり、仕組みで解決することを考えます。

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』(P.38)

 真正面から戦うのではなく、仕組みで解決するという発想
 まさに、私は「そんな私でも貯められる仕組み」で変わることができました。

 その仕組みとは、「毎日の予算」というアプリに出会って知った、次のようなシンプルなものです。

 ・「月3万円」を「毎日1000円ずつ使える」と考える
 ・余ったら翌日に繰り越せる

 使わなかった分が、次の日の「使える額」として積み上がっていく。そうすると、「節約した」という行為がすぐに「明日たくさん使える」になるゲームになります。

 私のようなADHDの人には、「すぐに報酬が得られないと続かない」という特性がある人も多いです。

 × 「節約しても、良くて現状キープ、1円でも使ったらお金が減る
 ○ 「節約したら、使えるお金が増える

 前者では、せっかく節制しても報われた感じがありません。

 後者では、節制したぶんだけ毎日「見返り」があります。これがゲーム感覚になると、なんとも言えない楽しさになるんです。

 節約を、しんどい修行ではなく、ちょっと楽しい仕組みに変える

 お金のことで何度も自分にがっかりしてきた人にとって、本書は「根性ではなく仕組みで助ける」という視点を与えてくれる一冊です。