年間100世帯以上の相談にのる発達障害専門のFPで、ADHD当事者でもある岩切健一郎氏が書いた『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』が発売中だ。本書には「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて!」「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」など、発達障害の有無にかかわらず、多くの口コミが寄せられている。
4月2日~8日は発達障害啓発週間。それに伴い、著述家で、ADHD当事者でもある小鳥遊(たかなし)さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

【発達障害・就活のリアル】ADHD当事者が、就活中に直面した“残酷な壁”Photo: Adobe Stock

発達障害があると、夢まで遠く感じてしまう

 20年近く前のこと、私は障害者合同面接会からの帰りの電車内で泣いてしまいました。

 自分も他の人と同じように、
 難しい仕事を頑張って、
 好きなものを買ったり、
 おいしいものを食べたり、
 たまには旅行にも行ったりしながら、
 いつかはマイホームも手に入れたい。
 発達障害があっても、人並みに幸せに生きていきたい

 そんな夢を胸に、障害者雇用の合同面接会に臨んだ私が直面したのは、思い描いていた働き方への「壁」でした。

 そこで目にした求人の多くが、私が望んでいたものではなかったのです。

 当時の私が望んでいたのは、「複雑な仕事にも挑戦でき」「自分の成長も見込めて」「それなりの給料も得られる」働き方でした。しかし当時は、そんな仕事は、ほとんど見当たりませんでした

 障害者雇用で働こうとする人の中には、このような「働き方の壁」に直面する人もいるでしょう。

「壁」は働き方だけではありません。お金にも「壁」があります

 その一つが「団信(団体信用生命保険:ローンを組んだ人に万一何かが起きた場合に未返済の金額がゼロになるという保険)」です。

 家を購入するときに借りる銀行の住宅ローンは、団信への加入が条件になっていることがあります。一般に、発達障害があると団信の審査に不安を抱く人は少なくありません。

 働き方だけでなく、大きなお金が動く場面にも壁があるのかもしれない
 そう思わされる現実があります。

適切な知識は、人生を変える

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』には、「住宅ローンはどう考える?」という項目があります。

 大切なのは銀行選びと告知です。診断によって通りやすい銀行、通りにくい銀行があります。適切な銀行を選び、最低金利でローンを組めた方もいます。

(中略)

 団信が通らなかったとしても、住宅ローンをあきらめる必要はありません。もし住宅ローンを組めなくても、住宅を購入する手段は3つあります

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』(P.230)

 多くの人は、こうした情報を持たないまま「自分には無理だ」と立ちすくんでしまいます。

 発達障害があると、何かにつけて最初から「閉ざされている」と感じやすい

 でも本書は、その思い込みを、現実的な知識で少しずつほどいてくれます。

 情報を持っているかどうかで、未来は変わります。
 保険も住宅ローンも、「難しいけれど不可能じゃない」ことばかりです。
 適切な知識があり、信頼できる人がいれば、あなたに合った形はきっと見つかります。焦らず、あきらめず、正しい情報を味方にしてください。

『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』(P.234)

 この一節は、単なる制度解説の結びではありません。

 数多くの発達障害者のお金の相談に向き合ってきた著者だからこそ書ける、「無理」で終わらせずに現実的な選択肢に言い換えてくれる知見と想いが込められています。

 発達障害があっても、自分の人生をあきらめなくていい

 穏やかに、しかし力強くそう伝えてくれるのが本書の持つ最大の価値の一つです。