通帳を見て悩む女性写真はイメージです Photo:PIXTA

「4~6月に残業すると、手取りが減るからソンするよ!」という話を耳にしたことがあるかもしれない。なぜ残業代が増えるのに、手取りが減る可能性があるのか。その仕組みをわかりやすく解説するとともに、定年が視野に入った人がぜひ確認しておきたい「大事なルール」を紹介する。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

「手取りが減るのでお先に失礼します!」
筆者が驚いた新入社員の言動

 4月になると、新社会人向けに「給与明細の見方」や「先取り貯蓄のススメ」といったメディア記事が増える。いわゆる「季節もの」テーマだ。

 そうした記事に紛れて「春に残業すると、手取りが減るので注意!」というタイトルも見かける。残業代分、収入が増えるのに手取りが減るとは、どういうことだろうか。

 その理由は、社会保険料にある。厚生年金・健康保険などの保険料は給与の額に一定の料率を掛けて決まる。ただし、基本給そのものではなく、「標準報酬月額」と呼ばれる金額に料率を掛けて算出する仕組みだ。

「標準報酬月額」は、毎年4月~6月の給与の平均額を数万円刻みの「等級表」に当てはめて決まる。基本給のほかに、通勤手当、住宅手当、残業代など各種手当も含まれる。

 表に基づいて算出した保険料は、9月から翌年8月に給与から引かれる。これが、「残業をすると、等級が上がり、社会保険料が増える(=手取りが減る)」と言われる根拠だ。

「残業したら、手取りが減る」の記事を目にするたびに、30年以上前の会社員時代に仕事を教えた新人の言葉を思い出す。

 3週間の研修が終わり、配属になった新入社員に仕事のレクチャーをしていたら、終業時間を知らせるチャイムが鳴った。鳴り終わるやいなや、新人から「この時期に残業すると手取りが減ってソンをすると聞いたので、もう帰らせてください」と、真顔で言われ、びっくり。

 頭でっかちな新人だったのだろう。(言われなくても、そろそろ帰ってもらうよ。私は自分の仕事がたっぷり残っているのだから……)と心の中で毒づきながら、その日のレクチャーを終わりにした。

 昔話はさておき、本題に戻ろう。会社員にとって社会保険料の計算のもとになる「標準報酬月額」という言葉は、人事部などに所属しない限りなじみがない。

 しかし、将来の年金額などに影響を及ぼす重要ワードなのだ。仕組みと合わせてぜひ知っておきたい。特に定年後に再雇用で働き、給与が大幅ダウンしたとき、知らないと大きくソンをする事態にもなりかねないのだ。残業手当が無縁の管理職の人も、ぜひ最後までお読みいただきたい。