作家の有吉佐和子と
2人の芥川賞作家

 東京・中野区にある都立高校だ。1920年創立の東京府立第五高等女学校を前身としている。その伝統からか後年、文化人として活躍しているOGがたくさん巣立っている。

 文芸で才能を発揮した女性を、まず紹介しよう。

作家の有吉佐和子作家の有吉佐和子 Photo:SANKEI

『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『和宮様御留』など日本の歴史や社会問題など幅広いテーマを題材に、多くの人気小説を著した有吉佐和子がOGだ。

 有吉は、東京市立第四高等女学校(現都立竹台高校)から疎開先の和歌山県立高等女学校(戦後に閉校)を経て府立第五高女に入学した。卒業時には新制の富士高校になっており、その1期生だった。「才女」と持てはやされたが、芥川賞、直木賞とも「候補」に終わった。

 有吉が卒業した33年後に、長女で随筆家の有吉玉青(たまお)が、富士高校を卒業している。早稲田大文学部―東大文学部―米ニューヨーク大大学院演劇学科修了だ。

 芥川賞の受賞者が、2人いる。

 有吉佐和子より4年早く第五高女を卒業した津村節子が、65年に『玩具』で受賞した。津村はドレスメーカー女学院を経て学習院女子短期大文学科国文学専攻だ。津村は2016年に文化功労者に選定された。

 夫の小説家、吉村昭(東京・旧制私立開成中学・現開成高校卒)も菊池寛賞など多くの文学賞を受賞しているが、芥川賞については「候補」に4回なったものの受賞には至らなかった。

 もう一人の芥川賞受賞者は池澤夏樹で、88年に『スティル・ライフ』で受賞した。芥川賞の選考委員も16年間、務めた。北海道立文学館長もした。池澤は富士高校を経て埼玉大理工学部物理学科中退だ。父親は小説家の福永武彦(旧制私立東京開成中学・現開成高校卒)だ。

 池澤は小説家という肩書のほか詩人、翻訳家、エッセイストでもあり、文明や日本人についての考察を基調にした幅広い作品を手掛けている。芥川賞のみならず、谷崎潤一郎賞、伊藤整文学賞、芸術選奨、司馬遼太郎賞、親鸞賞、フランス芸術文化勲章オフィシエなど十数もの文学賞を受賞している。その数の多さは、日本の文学者で断然トップだ。