どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜ雑貨店や書店には、「スタッフの自腹買いアイテム」というコーナーがあるのか?Photo: Adobe Stock

「店員さんが本当に買ったもの」に、
つい手が伸びる理由

 お店を回っているとき、「スタッフ◯◯が自腹で買いました!」「家でも愛用しています」といった手書きのPOPが添えられたコーナーを目にしたことはありませんか?

 お店の利益のための「おすすめ」と言われるよりも、一人の人間としての「個人的な愛用」を知った瞬間に、その商品が急に魅力的に見えてきた経験があるはずです。

 実はこの「私物公開」は、お客様が抱く「売り込まれることへの防御壁」を無力化し、圧倒的な信頼感とともに購入を決断させるための、非常に強力な販促戦略なのです。

「裏側」を明かすことが信頼に変わる
(自己開示の相互性)

 人は、相手が自分の内面や個人的な情報をさらけ出してくれると、それに応えて自分も心を開きたくなる性質を持っています。これを心理学で「自己開示の相互性」といいます。

 スタッフが「実はこれ、買う時に迷ったんですけど…」といった失敗談や本音を公開することで、お客様は「この人は私に正直だ」という確信を持ちます。

 この信頼関係が、商品に対する警戒心を解き、「この人が言うなら間違いない」という納得感を生むのです。

 さらに、「実は買う時に迷いました」「最初は失敗しました」といった小さな弱みの開示は、かえって信頼度を高めます。心理学ではこれを「プラタフォール効果」と呼びます。完璧な推薦文より、少しの迷いや失敗談を含む言葉の方が、人間的なリアリティを感じさせ、共感を呼ぶのです。

「自分に近い人」の選択を信じる
(類似性による信頼)

 もう一つの理由は、専門家の理論的な説明よりも、身近な人の実感を重視する傾向です。自分と似た立場や境遇の人の意見は、より信頼できると感じられます。

 特に「自腹で買った」という事実は、「仕事(販売)」ではなく「個人(消費)」としての純粋な評価であることを証明します。

「自分と同じように悩んで、これを選んだんだ」という共感が、お客様の背中を優しく押し、失敗したくないという不安を解消させるのです。

他のお店でも使える「人間味の露出」設計

 スタッフの個性を活かすこの仕掛けは、あらゆる業種で応用可能です。

美容室:「店長が自宅の風呂場で実際に使っているシャンプー」を、使いかけのボトルの写真とともに掲示する
・飲食店:「まかないで一番人気の裏メニュー」を、スタッフが笑顔で食べている写真と一緒に紹介する
・学習塾:「講師の私が受験生時代にボロボロになるまで使った単語帳」を展示し、努力のプロセスを共有する

まとめ

「スタッフの自腹買い」をアピールするのは、単なるネタ作りではありません。

「自己開示の相互性」により、お客様との心理的な壁を一瞬で取り払い
・「プラタフォール効果」により、「迷った」「失敗した」という正直な告白が人間的な温かみと信頼感を生み出し
・類似した立場の人からの推奨により、共感を原動力とした購買意欲を引き出す

 という、「商品」ではなく「人」を介して価値を伝える、極めて現代的な販促戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。