どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。

なぜディスカウントショップやスーパーでは、「1000円均一コーナー」が常設されているのか?Photo: Adobe Stock

「あと一品」がどうしても欲しくなる理由

 ショッピングカートを押し、買い物をほぼ終えてレジに向かおうとしたとき、ふと目に飛び込んでくる「1000円均一(3点で1000円)」といったコーナー。

「あと一品でちょうど1000円だし…」「単品で買うより得だから、もう一つ探そう」そんなふうに、当初は予定していなかった商品を慌てて探し、カゴに入れた経験はありませんか?

 実は、この「均一・定額コーナー」は、お客様が一度締めたはずの財布を、もう一度「喜んで」開かせるための、非常に巧妙な販促の仕掛けなのです。

「ちょうど」という快感が判断を鈍らせる(メンタル・アカウンティング)

 人は無意識のうちに、お金を「食費」「おやつ代」「雑費」といった形で、心の中で別々の予算枠として管理しています。これを「メンタル・アカウンティング(心の会計)」といいます。

「1000円均一」や「3点選んで◯円」という提示は、お客様の心の中に「1000円の特別予算」という認識を作ります。

 一度その予算枠が意識されると、お客様は「その1000円をどう使い切るか」に注意が向き、一つひとつの商品の必要性を吟味するよりも、「枠を埋める満足感」を優先して、ついで買いをしてしまう傾向があるのです。

ゴールが近づくと購買が加速する(目標勾配効果)

 もう一つの理由は、あと少しで「完成」するという達成感です。あと一つ選べばセット価格になる、という状態は、心理学における「目標勾配効果」を生み出します。

 目標勾配効果とは、目標(この場合はセットの完成)が近づくほど、それを達成しようとする行動が活発になる現象を指します。

 レジ前の定額コーナーは、「あと少しで得をする」という身近なゴールを視覚化することで、お客様に「買わされた」ではなく「得をした」という満足感を与えながら、確実に買上点数を押し上げているのです。

他のお店でも使える「定額・均一」の設計

 この「心理的な枠」を作る手法は、小売店以外でも有効です。

・飲食店「おつまみ3点で1000円」の晩酌セット。単品価格を示しておくことで、セットの「お得感」を強調する。
・アパレル店:「ソックス3足1000円」コーナーをレジ前に設置し、比較的少額の追加購入として、最後の衝動買いを促す。
・美容室:「ポイントケア定額3000円メニュー」。メインのカット代とは別の「ご褒美予算」として、追加注文のハードルを下げる。

まとめ

 1000円均一やセット販売が効果的なのは、単に価格が安いからではありません。

・「メンタル・アカウンティング」により、お客様の心の中に「使い切るべき別予算」という認識を作り
・目標勾配効果」により、セットを完成させる「達成感」という快感を与え
・少額の追加負担であることで、追加の数百円への抵抗感を下げる

 という、お客様が自ら「もう一品」を欲しがるような環境を設計しているからなのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。