メガホンを手にテレビ観戦をする視聴者の様子写真はイメージです Photo:PIXTA

苦手なことに向き合ったとき、その原因をきちんと捉えられているだろうか。本当に必要なのは、できない理由をあいまいなままにしないことかもしれない。フリーアナウンサーの藤井貴彦は、新人時代の試行錯誤を通して、成長には「仕組みを知ること」が欠かせないと実感したという。その視点は、仕事に行き詰まったときのヒントにもなるはずだ。※本稿は、フリーアナウンサーの藤井貴彦『伝える準備』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

実況に必要な力を
「書く」ことで磨いた

 私は今でこそニュースを担当していますが、少し前まではスポーツ実況も担当していました(本当です)。実況の世界は果てしなく深く、私は入社1年目から実況のブラックホールに吸い込まれていきました。

 当時、Jリーグは開幕2年目。ゴールデンタイムと呼ばれる夜7時から、試合の生中継がありました。駆け出しだった私の仕事は、主に先輩アナウンサーの実況サポートでした。いざ放送席に入ると、サポーターの大きな声援を聞いては圧倒され、実況用の機材が目に飛び込んできては圧倒されていました。実況しない新人の私が、一番興奮していました。

 しかし試合開始のホイッスルが鳴り試合が始まると、私の興奮をよそに実況する先輩は冷静で、よどみなく、同じ表現を使わず実況をしていきます。プレーが動く中でも、的確に言葉を選び取る先輩を見て、私は絶望すら感じていました。

「大変な世界に入ってしまった。こんなことできない」ここから「語彙」と「瞬発力」に挑む、しんどい戦いが始まったのです。

 さて、この時に私が取りかかったのは「書く」ことでした。会社にある先輩たちの実況ビデオをかき集め、キックオフから試合終了まで、一言一句すべてを紙に書き出しました。