1試合分書き出すと、大学ノートにびっしり15ページくらいになるのですが、必死にやっても書き終わるまで1週間はかかります。それをとりあえず10試合分。なんとか3カ月で完了しました。今考えると古いアプローチですよね。

 でも、AIだって基本的な情報を大量に「食わせて」成長しますから、どの時代も基本の習得と分析が大切なのだと思います。

書き写して分かった
実況ワードの「仕組み」

 さて、その大量に書き出した実況ワードから、ある結論を導き出すことができました。それは、『実況は「つなぎの言葉」と「味な言葉」でつくられている』という結論です。

 例えば、「右サイドからクロスボールを上げる!逆サイドから直線的に走りこんで、ヘディングシュート、ゴーーーール!」

 この中でいえば「直線的に走りこむ」というフレーズが「味な言葉」にあたります。それ以外の部分は、繰り返しの実況練習で習得できる「つなぎの言葉」です。「直線的」という表現は、点取り屋が最短距離を走るシーンにはぴったりで、まさに「味のある言葉」でした。

 お鮨で例えるならば「ひと仕事してあるネタ」とでも言いましょうか。たった1口で時間と工夫が味わえる、そんな言葉のことを指しています。そして、この味な言葉こそが「語彙」なのです。

 一方、「つなぎの言葉」をいかにスムーズに出すか。これが「瞬発力」につながっていきます。

 結局私は、スポーツアナウンサーとして大成しませんでした。

 しかし、書き出すことで実況ワードの「仕組み」を理解することができました。大成しなかった代わりにブラックホールの成り立ちを解明した、といえば大げさですね。

仕組みを理解して
苦手を知ることが重要

 さて、実はここから先がものすごく大切なのですが、ものの成り立ちがわかれば、努力の仕方が見えてきます。努力の仕方が決まれば、あとは頑張るだけ。そこからは単純作業に没頭できるのです。

 人間誰しも、悩んでいることには「自分の苦手」なポイントが含まれています。その苦手の正体にライトを当て、仕組みを知ることで解決が見えてきます。