実家の墓じまいは、アラフィフ世代の大仕事だ。先祖の気持ちを尊重しながら慎重な決断が求められる。日韓累計45万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念した本記事では、ライターの柴田賢三氏に、「墓じまいで思わず後悔した瞬間」についてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
Photo: Adobe Stock
アラフィフ世代の大仕事
“実家の墓じまい”
田舎の「墓じまい」をしたときに、衝撃的な出来事があった。
急に亡くなった父親が、生前よく「離れた場所にある先祖代々の墓地には入りたくない。自分で新しい墓を構えたい」と口にしていた。
父は小さな漁村で生まれ育ち、高校を卒業すると同時に遠く離れた街に出て就職。その地に家も建てて、母と一緒に兄と私を育ててくれた。
確かに、父の生まれ故郷は遠くて不便な場所にあった。そこにある先祖代々の墓地に埋葬しても、われわれが墓参で苦労することになる。家族で話し合い、新しい墓地を探して一角を購入。父の生まれ故郷では「墓じまい」をすることにしたのだが、これがなかなかの大仕事だった。
祖父母の遺骨を、父親と同じ新しい墓地へ移動するための行政的な手続きや、それまで一族の墓守りをしてくれていた親戚一同への挨拶回り。読経をしてもらうお坊さんと、墓を掘り返す職人の手配など、事前の準備が思った以上に大変だったのだ。
亡父の願いは叶ったが
祖父の気持ちは……
ようやく当日を迎え、作業をしてくれる職人さんと現地で打ち合わせをしていると、こんなことを言われた。
「ここは山のてっぺんで水はけがいい場所だから、おじいさんのお骨はそのままの形で出てくると思いますよ」
50年近く前に亡くなった祖父は、火葬をせずに遺体を棺桶に入れてそのまま埋める土葬だった。業者の営業担当者からは、事前に「それほど時間が経っていれば、すでに骨も土に還っているはずですから、棺桶があったであろう場所の土を少しだけ骨壺に入れることになります」と聞いていた。しかし現場を見た職人さんは、祖父の骨は形が残っているだろうと推測したのだ。
まさかと思ったが、墓石と土台をドリルなどで破壊し、地面を掘り始めるとすぐに木製の棺桶が出てきた。しかも、ふたを開けると祖父の骨が「人間の形のまま」横たわっていたのである。
私はここで激しく動揺し、後悔した。
祖父は、自分が生まれ育った漁村の「海が見える丘」で安らかに眠り、土に還るはずだった。それを、孫の私たちが勝手に掘り返し、知らない土地に埋め直されるからだ。
父の願い通りには動いたが、祖父の気持ちはまったく考えていなかった。
その後も私は、かなり落ち込んだ。妻や娘にはいつも通り振る舞っていたが、骨になって出てきた祖父の姿が頭から離れず、なんとも言えない後悔の念に苛まれていた。



