困難を乗り越えるための2つの考え方

 現代の企業経営において、困難を乗り越える力は大きく2つの考え方に分けられる。

 1つは「防御的な回復力」と呼ばれるものである。予期せぬ事態が起きた際、無駄を省き、コストを削減して、既存の事業の形をなんとか維持しようとする守りの姿勢である。生き残るために支出を抑えることは大切である。

 しかし、守るばかりでは変化してしまった世界に取り残されてしまう。

 もう1つの考え方が「攻撃的な回復力」である。危機によって生じた混乱を、古いやり方を捨てて新しい仕組みを導入する突破口として活用する姿勢を指す。激動の時代に必要なのは、間違いなく後者の攻撃的な手法である。

 直面しているエネルギー危機や物流停止に対しても、ただ耐え忍ぶだけでは未来は開けない。中東からの燃料輸入に過度に依存する仕組みは極めて脆弱であり、維持することが困難になりつつある。エネルギー供給の自律性向上に資する原子力発電の再稼働、そして安全性を高めた次世代革新炉へのリプレースや新設に向けた根本的な仕組みの見直しが避けられない。

 既存の枠組みを飛び越えた新しい投資も必要になるだろう。物資が届かない物理的な障害を乗り越えるため、企業は人工知能を活用した「デジタルのパイプライン」を構築することが急務となっている。

 世界中の取引先の状況をデータで瞬時に把握し、一部の地域で問題が発生すれば、自動的に別の安全な地域から調達を行うような柔軟で賢い物流網を作り上げることが求められている。

 組織を動かすのは結局のところ人間である。物価上昇や先行きの見えない不安感から、働く人々の心は疲弊しやすい。不況だからといって人材への投資を削るのではなく、反対に、新しい技術を学ぶための研修を充実させ、安心して働ける環境を整えることが大切である。

 新しい挑戦を奨励し、失敗を許容する風土があれば、従業員は自ら考えて行動するようになる。未来に何が起こるかを複数のパターンで予測し、あらゆる変化にしなやかに対応できる組織を作ることが重要だ。目の前の出来事に一喜一憂するのではなく、常に数歩先を見据えた行動をとることが、結果として組織全体を守ることにつながる。