飲み過ぎ、食べ過ぎ、いつもスマホを見てダラダラ――こんな自分をなんとかしたい。でもやめられない。そんな人におすすめなのが、書籍『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』(キム・ソクチェ著/岡崎暢子訳)だ。本書の発売を記念して、ライターの照宮遼子氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【飲み過ぎ、食べ過ぎ】「わかっちゃいるけどやめられない」人がすべき行動・ベスト1Photo: Adobe Stock

治療の一環として、絵を描き始めた画家

近所の美術館で近代フランス画家のモーリス・ユトリロ展をやっていた。

パリの街並みを描いた、ユトリロの白を基調とした絵が好きだったので足を運んだが、彼自身についてはほとんど何も知らなかった。

展示室に入ってすぐ、作品の横に貼られた紹介文が目に入ってきた。

ユトリロは、アルコール依存症の治療の一環として、18歳から絵を描き始めた。しかも最初は、乗り気ではなかったという。 

あんな素敵な絵を描く人が、そんな始まり方をしていたのか。
もう10年くらい前に見た展示なのに、そのとき受けた衝撃は今でもはっきりと覚えている。

アルコールで失敗したことが多い自分には、なんとなく他人事に思えなかったのだ。

やるべき行動ベスト1:音楽や芸術に没頭する

欲望を抑えるにはどうすればいいのか。

神経内科専門医として脳科学分野の第一線で活躍するキム・ソクチェ氏は、著書『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』の中で、19世紀の哲学者ショーペンハウアーの言葉を引用して、欲望の乗り越え方についてこう述べている。

「こうした欲望から逃げられる唯一の手段として、彼は、「禁欲」、そして「芸術に触れること」を挙げています。音楽や芸術に完全に没頭すれば、しばらくの間だけでも欲望の束縛から自由になれ、心安らかに過ごせると言うのです。」――本書より

ショーペンハウアーによると、「意志」とは「生きようとする盲目的な衝動」だという。

それなら、無理に抑え込もうとするよりも、別のものに目を向けたほうがいい。

気づいたら、飲まなくなっていた

フリーランスになってから、仕事が立て込んだ時期があった。

昼も夜も締め切りに追われて、気づけば3か月間、まったくお酒を飲まなかった。飲まなかったというより、飲むことを忘れていた。

それまでの自分なら、お酒は特に理由もなく飲んでいた。

でも、その3か月間は、我慢していたわけでもなく、ただ目の前の仕事に向かっているうちに、飲むという選択肢自体が浮かばなくなっていたのだ。

脳が別のことに向かっているとき、衝動はそっと小さくなる。

本書には、衝動の仕組みについて、哲学や脳科学の視点から語られている。「なぜ変われないのか」という問いを長年抱えてきた人ほど、見え方が変わっていく一冊だ。

(本稿は『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』に関する特別投稿です)