人から認められたい。褒められたい。そのような「承認欲求」は誰もが持っているものです。でも、その感情が強すぎると、期待通りにいかないと、つらい気持ちがやってきます。書籍『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』(キム・ソクチェ著/岡崎暢子訳)は、神経内科専門医として脳科学分野の第一線で活躍する著者が、「自分の感情や欲望に振り回されずに生きる方法」を、脳科学・心理学・哲学の視点からわかりやすく解説した一冊です。本記事では本書の発売を記念して、その内容を一部抜粋・再編集して紹介します。
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行動しても、「結果」に執着しない
ヒンズー教の聖典の中でももっとも有名な『バガヴァッド・ギーター』は、欲望のない行為(ニシュカーマ・カルマ)の重要性を強調しています。
つまり「期待せずに行動し、結果に執着するな」という教えです。
人は行動するたびに「これで得をするかな?」と見返りを計算しがちです。
つまりその瞬間、すでに欲望に振り回されているわけですね。
これについて『バガヴァッド・ギーター』では、「自分のなすべきこと」(ダルマ。義務や法、権利など)そのものに集中すれば、心はむしろ自由になると説いています。
たとえば、ボランティア活動。「ほめてもらえるかも」と期待していて何も起こらなければ、がっかりしてしまいますよね。
しかし、「自分がすべきことだからやる」という気持ちでいれば、他人の評価がどうであれ、心の平静も集中力も保てるわけです。
「欲望」は終わりがない
欲望は達成と同時にまた新たな形に生まれ変わります。
「昇給したから次は昇進だ」「付き合えたから次は結婚だ」……このように無限に姿を変えながら、「今、この瞬間」に得られるはずの満足を、未来へ未来へとどんどん先送りしていくのです。
『バガヴァッド・ギーター』は、まさにこうした終わりのない欲望のしっぽを断ち切り、心の独立をうながそうと主張しています。
「結果に期待せず動け」
「結果に期待せず動け」という教えは、何も無気力に生きろということではありません。
むしろ積極的に、揺らぐことなく行動することを提案しているのです。
川の水が岩にぶつかっても流れを止めないように、私たちも人生の真ん中で欲望の騒音を聞きながらも、自分の芯を失わずに前進できる―この教えは、そんなセルフコントロール術です。
哲学というより、今の時代にうってつけの「心のマネジメントスキル」といえそうですね。
(本稿は『私たちはなぜ「やるべきこと」をやれないのか、「やめたいこと」をやめられないのか』から一部抜粋・再編集した記事です)








