「70代になった親と、あとどれくらい一緒に過ごせるのだろう」。ふと、そんなことを考える瞬間はないだろうか。これからの時間をよりよいものにするために、いまあらためて意識したいことがある。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン氏が書き、世界20か国以上で続々刊行されている『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』からヒントを紹介しよう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

【要注意】「70代の親」に毎日してほしいこと・ナンバー1Photo: Adobe Stock

一度の「転倒」が命の問題につながる

 親が70代を迎えると、病気やケガのリスクが一段と高まる。離れて暮らしている場合など、いつまでも自分の足で歩き、健康でいてほしいと願うのは当然のことだ。

 高齢期の健康維持において、私たちが想像する以上に致命的な要因となるのが「筋肉の減少」とそれに伴う「転倒」である。

 医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン著『筋肉が全て』では、加齢による筋肉の減少が高齢者の命に関わる事態を引き起こす最大の原因の一つであると警告している。同書では次のように述べられている。

 アメリカでは「心臓病」による死亡者数は年間約38万人に達し、それとは別にさらに32万人が原因不明の心停止で死亡している。
 カタボリック危機
(筋肉や身体組織が分解されていく状態)という観点から転倒を考えると、転倒は65歳以上の人びとのケガや死亡の主要な原因であり、世界的にも不慮の死亡原因の第2位となっている。
 このことからも骨格筋が人生において闘い続けるための鎧であることがわかる。――『筋肉が全て』より

 著者は、「筋肉」は単なる見た目や運動能力の問題ではなく、人が健康に生き延びるための防御装置そのものだと考えているのだ。

 では、すでに衰え始めている人は手遅れなのだろうか。著者はそうではないと強調する。

 損傷した筋肉を修復するのが難しいという科学的事実を隠すつもりはない。
 しかし、筋肉の健康を改善するのに遅すぎることは絶対にない。
 加齢のせいで必要な活動量を維持できなくなった人も、強く健康になることができる。病気やケガの治療中でも、コントロールされた安全な方法で活動レベルを高める方策は無数にある。
 効果を上げるためには、気分に左右されることなく身体を動かし続けることが大切だ。――同書より

 高齢者にとって、ちょっとした転倒による骨折は、寝たきり状態を招き、筋肉を急速に失わせる引き金となる。それを防ぎ、病気から身を守る「鎧」となるのが筋肉だ。

歩くことがいちばん大事

 私は70代の親に筋肉の衰えを防ぎ、活動レベルを維持してもらうためにも、「歩くこと」をぜひしてほしいと思い、モチベーションを上げるためにスマートウォッチやウォーキングシューズをプレゼントしたりしている。

 高齢の親にいきなりハードな筋力トレーニングを勧めるのは現実的ではない。しかし、ウォーキングであれば、コントロールされた安全な方法で日常の活動レベルを高めることができる。歩くという基本的な動作を継続することは、脚の筋肉に適度な刺激を与え、心肺機能を維持し、代謝を促すための確実な第一歩となる。

 筋肉は何もしなければ年齢とともに確実に衰えていくが、気分に左右されず身体を動かし続けることで、その減少を食い止め、健康を改善することができる。

 遅すぎるということは絶対にない。親の健康寿命を確実に延ばすために、まずは毎日の「ウォーキング」を提案してみてはいかがだろうか。

(本記事は、ガブリエル・ライオン著『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』に関連した書き下ろし記事です)

ガブリエル・ライオン(Dr. Gabrielle Lyon)
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。