「こういう教育にすれば本質的な学びができる、という自分のやりたい教育の姿もみえてきていました。それをやることは、既存の学校システムでは難しい。学校も変わってきていますけど、現在のような変化のスピードでは、自分が定年を迎えるころになっても、自分が考えるような学校にはならない。それなら、自分でやろうと考えたのです」

子どものペースで学べる「自由進度学習」

 ヒロック初等部では自由進度学習が基本となっています。子どもたちが自分の学びたいことを自分のペースで学んでいく学習スタイル、それが自由進度学習です。「小学校低学年の年齢で、中学生レベルの理科を学んでいる子もいれば、数学で高校生レベルをやっている子もいます」と、蓑手さん。無理やり先へ先へと進んでいるわけではなくて、楽しくなったらどんどん進んでいくというスタイルです。もちろん、いまのところがわからなかったら前に戻って学び直すこともあります。自由は、あくまでも自分のペースを守るということです。

 これが公立学校では、自由進度学習を授業の基本にするところまで時間を捻出することはできません。その学年で同じことを、同じペースで勉強することが義務づけられているからです。しかも、やらなければならないことはかなり多く、時間の捻出をさらに難しくしています。それが、ヒロックならできるのです。だから、蓑手さんは公立小学校を辞めてヒロックを選びました。

 自由進度学習がヒロックの基本だといっても、子どもたちが選択しないものは学ばなくていいわけではありません。そこを、蓑手さんは次のように説明します。

「探求的な場があって、たとえば漢字について考えたりします。漢字が読めたほうがインターネットで情報収集するにもやりやすいし、書ければメモもとれる、といったことを子どもたちが話し合いながら気づいていきます」

 同じ漢字をノートに10個も並べて書かなくても、興味がもてれば子どもたちは漢字を習得していきます。子どもたちは納得しながら漢字の勉強をしていくわけです。そのための「仕掛け」が、教室中にあります。たとえば、一日のスケジュールが書かれたホワイトボードが教室の一画に置かれているのですが、そこには意図的に漢字が多用されています。