2023年度に発表された小中学校における不登校者数は過去最多の29万9048人、小中高校などで判明したいじめ件数も過去最多の68万1948件になっています。不登校は個人の問題ではなく社会問題です。本連載では、20年以上にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。

【子どもの不登校】フリースクールとオルタナティブスクール、どう違う?Photo: Adobe Stock

フリースクールの費用は、平均月3万3000円

 不登校の子や“普通の学校”に入学することを選ばなかった子どもたちが通う「フリースクール」は、1980年代から存在していました。
 NPO法人運営の「東京賢治シュタイナー学校」などは、いわゆる“老舗”として知名度も高いので、ご存じの方も多いかもしれません。

 ただ、現在、法律で「正式な学校」として認められているのは、学校教育法第一条で規定されている学校(「一条校」と呼びます)だけです。最近は、フリースクールをこの「一条校」と同等扱いにしよう、という声も多々あがっていますが、今のところは認められていません。従って、フリースクールに通う場合は、もともと通っていた学校に籍を置き、校長先生の判断で“出席認定”をもらう、という形になります。

 フリースクールにかかる費用は、文科省の調査では、“平均で”月約3万3000円となっていますが、教育内容も料金も、特に基準が決められているわけではないので、本当に様々です。子ども自身に合う合わないもありますので、慎重に見極める必要があると思います。

増加傾向にある「オルタナティブスクール」

「多様性を大切にしよう」といううねりが世界的に大きくなってきた昨今、受験を第一目的にする画一的な教育から距離を置き、子どもたちのオリジナリティやクリエイティビティを大切にしながら、不確実な社会を生きていく力を身につけよう、というビジョンを掲げる新たなフリースクールが続々と誕生しています。

 こうしたスクールは、不登校支援を主な目的としていた従来の「フリースクール」とは一線を画しており、“これまでの学校に代わる学校”という意味で「オルタナティブスクール」と自称していることが多いようです。
 保護者の価値観も多様化し、最初からオルタナティブスクールを選んで入学させるケースも少しずつ出てきています。

 不登校児童・生徒の増加に対して、公的な不登校支援政策が不足する中、一部の自治体では、フリースクール等に通う家庭に対して経済支援を行う動きも出てきました。
 2022年、東京都では総予算1億円を確保し、フリースクール等を利用している家庭へ調査協力を呼びかけ、実態調査に協力すれば月1万円程度、年間最大12万円を支払うという事業に取り組みました。

 フリースクールには、縛りがないからこそ、公教育では成しえないことができるわけですが、同時に、その質や安全管理、スタッフの育成方法や教育内容も様々。
 親御さんとしては、子どもを預けるわけですから、実態が見えないのは不安ですよね。最低限、子どもを預かる場所としてすべきことがなされているのかを、行政として把握してもらうのは、価値あることだと思います。

 本書では、特徴的な教育をしているフリースクールやオルタナティブスクールの一例を、紹介しております。

 *本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。