「絶対に売れない」と猛反発されてもアルミにしたワケ

 見栄えよりも本質を優先する姿勢は、時代が下ってからも明確な行動として表れている。

 1980年代前半まで、スナック菓子業界では中身が見える透明フィルムをパッケージに使用するのが絶対的な常識であった。消費者が店頭で中身の形や量を確認できる事実が、安心感に繋がると広く信じられていたゆえんである。

 読者の皆様も、昔のお菓子が透明な袋に入っていた記憶をお持ちかもしれない。中身が見えるからこそ、安心して買い物かごに入れることができた時代背景が存在した。

 だが、透明なパッケージには科学的な観点から致命的な弱点が存在した。光を通してしまうため、油で揚げたポテトチップスが酸化し、風味が劣化してしまう問題である。

 消費者に最もおいしく、良い状態で商品を届けることこそが人助けの根幹だと考える松尾は、事態を看過できなかった。1983年、光や酸素の侵入を大幅に抑えられる「アルミ蒸着フィルム」の採用を決断した。

 社内外からは猛烈な反対の嵐が巻き起こった。流通業者や小売店、社内の営業部門からも、中身が見えないお菓子など絶対に売れないという強い反発が上がったのである。にもかかわらず、松尾は品質優先の姿勢を一切崩さず、業界の常識に逆行する導入をトップダウンで強行した。

 結果として、鮮度が保たれたポテトチップスは、圧倒的なおいしさによって消費者の絶大な支持を獲得した。透明な袋でなくても、中身が美味しければ必ずわかってくれる。

 当時の揺るぎない信念は、現代の白黒パッケージ化の決断と驚くほど構造が似ている。インクという資源が枯渇した非常時において、色彩という見栄えを放棄する決断は、1983年の出来事と完全に軌を一にする行動と言える。

 商品を供給し続けることへの並々ならぬ執念には、過去の苦い経験も大きく影響している。2016年夏、北海道を襲った異常な連続台風により、国内産じゃがいもが記録的な不作となった。結果としてカルビーは、主力商品の一部休売という、食品メーカーとして最悪の事態に直面したのである。